台湾と福島をつなぐ元タレント～被災地に移住　女性社長の挑戦～

Chu! PRESS

2023.11.23

原発事故の被災地・福島県飯舘村に、ちょっと変わった経歴をもつ女性社長がいる。去年、移住した峯岸ちひろさんだ。峯岸さんは神奈川県出身。村に移住しただけでなく、福島県産品の輸出を手掛ける株式会社サクラ・シスターズを立ち上げた。そこには、福島に対する強い思いがあった。
「台湾でのコネクションを生かして、福島のために事業をしたい」。

実は峯岸さんは、日本の大学に在学中、休学して台湾で芸能活動をした経験がある。現地では、テレビにも出演していた。その活躍のさなか、おととし、台湾の仲間と共に被災地・福島を視察。原発事故の風評被害の実態を知り、「何かできないか」と思ったことが移住のきっかけだった。それ以来、福島の魅力をＰＲしながら、県産品の輸出に取り組んでいる。「福島の風評払拭は私の任務」と語る峯岸さん。ことし１０月、福島のためにと、大きなプロジェクトにも挑んだ。その舞台は、かつての仲間たちがいる台湾だ。

この日、峯岸さんは、台湾のプロ野球チーム「楽天モンキーズ」の球場へ向かった。人気のチアリーダー「楽天ガールズ」でも知られるチームだ。そこにブースを出展し、福島をＰＲするという。しかも、峯岸さんのそばには、現地のアイドルグループやインフルエンサーの姿もあった。実は、台湾時代のつながりで、現地の芸能事務所が協力してくれたという。「絶対、大丈夫！」事務所の社長も峯岸さんの応援に駆け付けていた。

始まった球場でのプロモーション。福島特産の桃や馬刺し風味のポテトチップスなどを、ブースを訪れた人に試食してもらい、ＳＮＳで福島を発信してもらおうという作戦。アイドルグループやインフルエンサーの協力もあり、ブースは盛況。訪れる人からも「おいしい」と好評だった。

そんな中、ブースにもうひとり、峯岸さんの応援団が駆け付けていた。球団副代表の礒江厚綺（いそえこうき）さんだ。実は礒江さんは、曾祖母が相馬市にいて、もともと福島にゆかりがあった。それだけに「ぜひ福島の魅力を伝えられれば」と、今回快く協力を申し出たという。

球団の協力もあり、峯岸さんが楽天ガールズに飛び入り参加したり、球場の大型ビジョンに福島のＰＲ動画が流れたりと、球場が福島一色になる大規模なイベントに。成果を上げたプロジェクト。峯岸さんは、台湾の多くの仲間の応援に「本当にありがたい」と感謝の思いでいっぱいだった。

一方、海外では福島に対する風評も根強い。台湾も例外ではない。福島第一原発の処理水放出に対する不安を口にする人がいるのも事実。そこで今回のプロジェクトでは、峯岸さんが球場の外でも福島をＰＲ。分刻みのスケジュールで飲食店を駆け回った。台湾時代のつながりで、現地には旧知の店も多くあり、日本料理店では和服姿で、福島特産の桃のジュースを客にふるまった。

飲食店を回る中、峯岸さんにとって思いがけず、うれしい出来事もあった。それは、現地でも人気の洋菓子店でのこと。ショーケースの中に、福島産のナツハゼ（ブルーベリーのようなフルーツ）を使ったケーキが並んでいたのを見つけた。実は、峯岸さんは、ことし９月に店員を福島に招き、ナツハゼを含めた食材を紹介。店で、早速取り入れたという。

今回、峯岸さんは、この洋菓子店にナツハゼのシロップやジャムを持ち込み、新商品の開発を依頼した。すると店は、忙しいにも関わらず、即興で試作を始めた。峯岸さんを応援する仲間たちが、こうして福島復興を支えている。

福島のためにと起業してから、わずか１年あまり。ビッグプロジェクトを無事やり遂げた峯岸さん。「取り組みを重ねていけば、風評は払拭できる」そう感じたという。来年には、福島と台湾を結ぶ定期路線の開設も予定される。峯岸さんは、「福島の観光をもっとＰＲして、福島に来てもらって、遊んでもらって、食べてもらって体験してもらう、インバウンドに結び付けるような活動をしていきたい」とさらに意気込みを見せている。

Chu!PRESS編集部

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