約５割の女性が月経前症候群や更年期の症状で昇進を辞退…女性の健康問題と働き方

Chu! PRESS

2023.04.21

「いつまでも自分らしく活躍したい」という思いを抱く女性たちが集まり、女性の健康問題や働き方について考えるイベント『My Lifeギャザリング』が福島市で開かれました。この中で注目を集めたのは、福島県立医科大学医学部・産科婦人科学で講師を務める山口明子先生の講演です。
山口先生は「女性は１０代から始まる月経や妊娠出産だけではなく、比較的若い世代から婦人科ガンの罹患率が高まるなど特有の健康課題を抱えています。さらに、ホルモンの変化で思春期、性成熟期、更年期と生涯を通じて様々な健康問題に直面します。」と話します。そうした現状に加えてこのイベントで指摘されたのは、女性特有の健康問題が自らの仕事だけではなく企業や社会全体の成長にも影響を与えているという点です。

【写真】『My Lifeギャザリング』の様子（福島市）

■女性の半数以上が退職を検討するワケとは？

大塚製薬が実施している『女性の健康推進プロジェクト』の調査結果にこんなデータがあります。

管理職への昇進の機会があった女性を対象に行ったアンケートで、月経前症候群（PMS）や更年期の症状で「仕事を辞めたことがある」「仕事を辞めようと思ったことがある」と答えた人の割合が５割を超えるという結果です。

私も毎月、月経前症候群（PMS）で体調を崩してしまう時期があります。その症状は、睡眠障害や倦怠感など人によって様々ですが、私の場合は頭痛や腹痛に加え、イライラなど精神的に不安定な状態に陥り、そのときそのときをどうにか乗り越えるように過ごしてきました。さらに、３人の子どもを出産した後は、疲れやすい、疲れが取れない、風邪が治りにくいという体の不調を１０年近く抱え続けているのも悩みです。

そのことが理由で、仕事に対してキャリアアップをためらうこともありました。私だけではなく、そうした女性特有の健康課題が原因で、仕事を続けることや昇進などのキャリアアップをあきらめることにつながっている女性が少なくないのが現状です。それは、企業や自治体などの職場においても大きな課題を生んでいます。

総務省の調査によりますと、少子高齢化が進む日本の生産年齢人口（15～64歳）は1995年をピークに減少し、2050年には5,275万人と2021年と比較して29.2％も減少すると見込まれています。そこで政府は「女性活躍推進」を掲げ、女性が働きやすい環境作りを進めていますが、上記のデータが示す通り、女性の半数以上が月経前症候群（PMS）や更年期の症状で働くことをあきらめてしまいかねないということです。

■専門家が示す３つの大切なこと

では、私たちはどのように女性の健康課題と向き合えばいいのでしょうか？
イベントでは福島県立医科大学の山口先生などの専門家が女性側の目線で３つの大切なことを示してくれました。

ひとつは「かかりつけの婦人科を持つこと」です。症状には個人差がありますが、女性特有の体の変化は“誰にでも必ず起こる”ということを認識することから始まります。私の場合、月経前症候群（PMS）の症状があっても「仕方がないこと」「少しの期間踏ん張れば終わる」と考えて過ごしていました。しかし、山口先生は「これくらいなら大丈夫」と思わず、心配なことがあれば専門家に相談し、客観的な目線で自分の体を理解してくれる味方を作ることが大切と話します。「婦人科は症状がひどくならないと受診対象にならないのでは」というイメージがあり、敷居が高いように感じていましたが、山口先生は「婦人科は女性の味方です。困ったことがあれば安心して受診して欲しい」と話します。

【写真】中央＝福島県立医科大学医学部・産科婦人科学の山口明子講師

もうひとつの大切なことは「食生活による健康管理」です。
女性のホルモンバランスを整えるために大切なのはバランスの良い食生活で、特に近年は納豆や豆腐など大豆や大豆製品に含まれる栄養素「大豆イソフラボン」が注目されています。女性ホルモンに似た働きをする栄養素で、加齢とともに失われる女性ホルモンの不足を補うことで月経前症候群（ＰＭＳ）や更年期のトラブルを予防してくれるものです。

毎食の食事に大豆や大豆製品を使うのは大変なので、「やってみようかな」くらいの気軽な気持ちで継続していくことが大切だそうです。

そして、３つめの大切なことは「自分の体の声を聞く」こと。福島県立医科大学の山口先生は「体がつらいときは“今のペースだとちょっと辛い”というサイン」と話します。年を重ねるごとに、体力は低下していく一方で、仕事や家庭で求められる役割は増えていくという状況が生まれます。その状況下で、仕事も家庭のことも全力で行うのはとても難しいのではないでしょうか。そこでポイントとなるのが「配分」です。

例えば、家族に対しては「お母さんはいつも元気に頑張っているけれど、体の調子が良くないときがあるんだよ」ということを話して理解してもらい、家事を休んで婦人科を受診する時間を作ってもらう。職場に対しては「チャレンジするところ」と「できる部分で取り組むところ」のバランスを見直し、理解してもらうこと。まずは自分の体の声を聞き、周囲に対しても好不調を知ってもらい、力を注ぐ「配分」を調整してベストなやり方を見つけていくことが秘訣だそう。

とは言え、自分の体調について職場で話すのは勇気がいることです。
前述のアンケート調査では、自分の体調不良について多くの女性が「会社では誰にも相談できない／したくない」と答えています。特に女性特有の健康課題について、男性へ相談するとなると、話す側も話を聞く側も対応に戸惑うことが多いのが現状です。

イベントでは、福島県立医科大学の山口先生に加え、福島県産婦人科医会会長の野口まゆみ先生（西口クリニック婦人科院長／福島市）、福島中央テレビの大橋聡子アナウンサーなど県内の様々な企業で働く女性たちとのパネルディスカッションも行われました。その中で「職場では言い出しにくい」「どこまで話したらいいか判断が難しい」「急な休みは同僚の負担になるのではと不安になる」といった意見があがりました。

その解決方法として、第一生命保険福島支社では“何でも話せる風土づくり”を意識し、働く環境の改革に取り組んでいるそうです。

第一生命保険福島支社では、経営者や管理職が「イクボス宣言」を行い、職場のワーク・ライフ・バランスを考え、社員のキャリアと生活を応援しながらも組織の業績で結果を出すことを目指しています。上司自らも仕事だけでなく私生活を楽しむことができるような働き方を実践しているとのこと。

体調不良や家庭の事情による急な休みは、女性に限らず誰にでも起こりえることです。困っていることを共有し合うことで、「お互い様」で助け合う環境が必要です。また、誰かの困りごとがきっかけで働く環境を改善する気づきにもつながります。困っている人でも安心して働ける環境は、どの立場の人にとっても働きやすい環境となるのではないでしょうか？

■『働く』で輝くために

私は誰かに相談することも婦人科を受診することもなく、自分の健康を後回しにすることで子育てや仕事のバランスを保ってきました。しかし、もしそのことで健康を保てなくなってしまえば、大切にしたいと思っている家庭も仕事も成り立たなくなってしまうでしょう。

今回のイベントで得た学びはたくさんありますが、一番心に響いたのは「何かあったら一人で抱え込まずに、周りと共有して改善方法を考えていきましょう」という言葉です。一人で全部完璧に頑張るのは無理があることは以前から頭ではわかっていたものの、改善できずにいました。このイベントを通して、実際は無理していた部分を見直す必要があると感じました。月経前症候群（PMS）の症状を気軽に相談できる「かかりつけの婦人科」を持つこと。体調が思わしくないときには、職場の同僚や家族に正直に伝えて手伝ってもらうこと。そうした考えや働き方が、今よりも広く社会に認められるようになっていければと思います。

そして、お互いが助け合えるよう、周りの人たちを理解する気持ちも大切にしたいと改めて感じました。それぞれが抱える悩みが違っても、お互いの価値観を認め合い尊重することができれば、職場でも家庭でも相談できる環境が整い、どのような場面でも前向きに働くことができます。自分らしく輝く生き方ができる社会となるよう、自分自身も、周りも大切にしていきたいと思います。

【取材・執筆】ケイリーパートナーズ　木村倫子

※この記事はケイリーパートナーズと福島中央テレビの共同連携企画です。
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