今年２月に“ある地域”で発行された小冊子を開くと、こんな内容が目に飛び込んできます。
「子どもの年齢別おでかけＭＡＰ」
「子どもの一時預かりってどんな感じ？」
「産休育休からの職場復帰のリアル」

子育て中の親たちにとって、この内容が自分の住んでいる地域に特化した内容であれば、どれも気になる話題ばかりで、思わず手に取ってじっくりと読んでみたいですよね。この小冊子は福島県白河市で発行されたものなんです。冊子の名前は「Ｒｉｐｐｌｅs（リップルズ）」。訳すと「波紋」という意味で、１つのきっかけから可能性が波紋のように広がっていくことをイメージして名付けられました。

ページをめくると、白河市を中心とした子育ての話題が詰まっていて、どれも「ママ目線」で書かれているのが特徴です。それもそのはず、掲載されている内容を取材・執筆・編集したのは、白河市に住む子育て真っ最中の６人のママたちなんです。しかも、結婚や出産、引越しなどを機に仕事を辞めていて、現在、仕事復帰を目指しているママたちです。

【「週１回２時間からはじめる復職プロジェクト」として発行】

この冊子の発行は、白河市が進める「女性に寄り添うライフ・ワークサポート事業」の一環で制作されたものです。その目的は“働きたい女性の復職”が大きなテーマになっていますが、その中で白河市が取り組んでいるのが、“週１回２時間からはじめる復職”です。その働き方を実践するために、この冊子の制作に取り組んだ６人のママたちは、白河市からの委託を受け“週１回２時間の仕事”として作り上げたものなんです。

働く意欲に関して女性を対象に行った国の調査では、「出産したあとも仕事を続けたい」と答えた割合が６３．６％に上った一方で、実際に第一子を出産後に仕事を継続している女性の割合は５３．１％と、出産後に離職せざるを得ない女性たちが多い状況です。その理由として多かったのは、「仕事と育児の両立の難しさ」や「勤務地や転勤の問題」などが挙げられていました。

白河市が子育て中の母親に行ったアンケートでも「ブランク期間があることで、再就職に不安を感じる」といった声がありました。ただ、その一方でアンケートの回答で多かったのが「短時間でもいいから働きたい」という声でした。

そこで白河市は、女性たちの復職を支援するため「週１回２時間からはじめる復職プロジェクト」として、ママによるママのための小冊子の制作を企画したんです。

【働き方の新たな選択肢に出会える】
この小冊子の制作は、子育てに関する情報を市民に伝えるだけが目的ではなく、働きたい女性たちの挑戦の場ともなり、「週１回２時間の仕事」で完成させたものでした。制作が始まったのは２０２２年９月、冊子をつくるために必要なパソコン操作の技術を学び、取材先の選定や記事の執筆、写真を撮影、ページのデザインなどを６人でワークシェアリングし、５カ月かけて完成させたといいます。もちろん、冊子の内容は「ママ目線」が随所に取り入れられています。

プログラムに参加した２児のママである佐藤美由紀さんは、夫の転勤で白河市に引っ越してきましたが、子どもの預け先の確保が難しく、仕事へ復帰できずにいたといいます。しかし、週１回２時間から始められるこの冊子作りを通して、仕事を分担してチームで取り組む方法を学び、「働き方」の新たな選択肢に出会うことが出来たと話します。

また、高校生と中学生の子どもがいる小谷田由香さんは、元々は看護師として働いていました。体調を崩して退職してからはなかなか復職する勇気が持てずにいたそうです。しかし、この週１回２時間の働き方に参加してから、働くことの楽しさを改めて感じ、「次は何をしよう！」と復職へ向けて意欲的になったと話します。

２月１３日に行われた成果報告では、６人全員が晴れやかな表情で、出来上がった冊子の魅力と制作過程を紹介していました。
 

子育てと両立しながら少しずつ作業を進め、仲間と一緒に１つのことを成し遂げる。
この経験は、復職を望むママたちに「自信」や「働き方の新しい選択肢」を与え、一歩を踏み出すきっかけとなっていました。

この“週１回２時間”という働き方で作られた小冊子『Ripples』は、白河市内の子育て関連施設や、市役所、図書館などで無料配布されているほか、市のホームページでも閲覧することができます。

Chu！PRESS編集部