「絶対に復活させる」全線で運転再開ＪＲ只見線　建設会社社員“故郷への思い”

Chu! PRESS

2023.03.08

「おかえり」「待っていたよ」沿線には喜びの声が広がりました。福島県の会津若松駅と新潟県の小出駅を結ぶ全長１３５キロのＪＲ只見線。２０１１年の新潟・福島豪雨で被災、橋梁が崩落するなどしましたが、去年１０月全線で運転を再開。１１年ぶりにレールの音が響きました。
車窓から楽しむ絶景が好評で“満席状態”の人気となり、全国的にもテレビなどで話題となりました。一方で、あまり聞く機会がないのがその裏側、工事に携わった人たちの思いです。そこで筆者は今回、復旧工事を担当した建設会社を訪ねることにしました。

会津若松市にある秋山ユアビス建設。主に、橋梁の復旧工事を担いました。その現場の管理を担当した星　光生さん（写真）です。被災状況を見たときは「これは線路か」と目を疑うほどだったといいます。それでも、星さんは会津の生まれ。故郷のため、只見線の復活を、当時心に誓ったそうです。

提供：秋山ユアビス建設

とはいえ、山間を走るＪＲ只見線。現場では難工事が続きました。重機を運び込むために、１年がかりで仮設の道路をつくるといったこともありました。大雨などで只見川の水位が下がらず、橋げたの補強工事が遅れるといったアクシデントもあったそうです。橋梁の部材を、つり橋のように吊り下げて設置する高い技術も求められました。続く難工事に工期も延長されましたが、それでもかなり厳しいスケジュールだったといいます。

提供：秋山ユアビス建設

しかし、そんな星さんを支えたのは、地元住民の声でした。夏のとある日、アイスでも食べてひと休みしようと、星さんが現場近くの商店に入った時のこと。店の人からこんな声をかけられたそうです。「いまの子どもたちは列車走っているのを見たことがない、ぜひ見せてあげたい」この時、星さんは思いをさらに強くしました。「絶対に復活させる」
その後も、工事が豪雪に阻まれるといったこともありました。最後の橋梁も試運転間際に完成するなど苦労は続きましたが、いつも、地元住民のあの一言を胸に工事を進めてきました。

提供：秋山ユアビス建設

そして、２０１８年の着工から４年。レールは再び一本につながりました。星さんは、開通式に立ち会うことはできませんでしたが、ニュースで喜ぶ沿線の人を見ながら「うれしかった」と振り返り、笑みをこぼします。あまりの人気ぶりに、まだ只見線には乗っていないそうですが、列車で出かけて「沿線の子どもの声を聞いてみたい」とも話しています。全国で赤字ローカル線の運営が課題となる中、復活を遂げたＪＲ只見線。それだけに星さんは、故郷・会津に「いつまでもレールの音を響かせてほしい」そう願ってやみません。

Chu!PRESS編集部

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