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徳光 雅英
徳光 雅英Masahide Tokumitsu
with a camera in Kawamata Town 1
 『ゴジてれChu!』木曜恒例の「ぶらカメ」のコーナー、今回は県北の川俣町(かわまたまち)を回ってきました。そのこぼれ話です(今回も、日付を遡る形で、数日分に分けて綴ります)。


今回は、川俣町でぶらぶら…
今回は、川俣町でぶらぶら…
 今回は24時間テレビが土日にある関係で、23日金曜日の平日にロケです。しかも学校も始まっているので、出会いは少ないでしょう。1回1回の出会いが貴重です。
 午前10時頃に川俣町に着いて最初に目にしたのは、「かいてん焼」という看板のあるお店です。

2階に「かいてん焼」の看板(「ん」が太くて大きい)。かいてん焼とは…?
2階に「かいてん焼」の看板(「ん」が太くて大きい)。かいてん焼とは…?
 かいてん焼とは、一体どんなものでしょう?作業中のご主人に話しかけると、
「あら、徳光さんだ。中央テレビはよく見るんです。」
と嬉しい言葉。お仕事中にも関わらず、取材に応じて頂けました。
 まず「かいてん焼」とはどんなものか伺うと、

御主人。仕事中にも関わらず「カメラもって回るやつでしょ?」ご名答!
御主人。仕事中にも関わらず「カメラもって回るやつでしょ?」ご名答!
「所謂大判焼きの事で、うちではそれを『かいてん焼』と言っているんです。」
 確かにご主人の手元を見ると、よく見る大判焼きを焼く道具が見られます。でもどうして「かいてん焼」なのでしょう?するとご主人が、店の裏へ案内してくれました。

手前には、所謂「大判焼き」を焼く機械が。写真はたこ焼きを作っている最中。
手前には、所謂「大判焼き」を焼く機械が。写真はたこ焼きを作っている最中。
「昔はこれを使っていたんですよ。」
 それは、「かいてん焼」を焼く為の板でした。
「今はガスですけど、昔は豆炭(練炭)で、その上にこの板を真ん中の軸にさして載せて、回転させながら焼いたんです。」

店の外に、何やらまる~いものが…。
店の外に、何やらまる~いものが…。
 こちらの店では50年以上前、お父さんの代から「かいてん焼」を作り続けているそうで、昭和30年代まではこの回転する板を使って焼いていたそうです。昭和42年生まれの私が見た事が無いのも、無理はありません。私の小さい時には、既に大判焼きの板は据え置き型で、2列や4列に丸いくぼみが並んでいたものです。回る板はスペースが余計に必要ですから、今の大判焼き用の板は効率的に出来ていますよね。なるほど「かいてん焼」の名前の由来はよく分かりました。

中心の軸に円盤をさし、時計のように回しながら焼いた、だから「回転焼き」。なるほど~!
中心の軸に円盤をさし、時計のように回しながら焼いた、だから「回転焼き」。なるほど~!
「餡子は、北海道の小豆を取り寄せて、うちで作っているんですよ。あすは五升分作ります。」
 何と「かいてん焼」の餡子は自家製。そのほか白あんやチョコ等5種類の中身があり、どれも100円(税込み)です。
「ただ売れるのは秋から春で、今の時期は余り出ないんですよね。なので夏は3種類に絞って作っています。」
 暑い時期は小倉あん・カスタードクリーム・ハムからしマヨネーズを販売中。私は自家製の餡子と聞いてオーソドックスの小倉あんを頂く事に。……生地がふわっとしていて、中の餡子はぎっしり入っています。優しい甘さながらたっぷりの餡子で、食べ応え抜群です。
「若い人には、『ハムからしマヨネーズ』が人気なんですよ。」
と言って、勧めてくれました。こちらは、ハムの旨味と、からしマヨネーズの柔らかい辛さと酸味がよく合います。しかもこの味だと、生地のほんのりついた甘さも引き立ちます。スイーツというより、ファストフードっぽい感じです。
「出来立てだと、マヨネーズが柔らかくて中から出て垂れて、若い人が制服のズボンを汚しちゃう事もありますね。」
 こうして「かいてん焼」は多くの地元の人に親しまれているんですね。店内には店に来た子どもと撮った写真や、食べた子どもからのメッセージが貼られています。
「帰省した人が、『懐かしいから』と川俣を離れる前にお土産で買っていく人もいますね。」

かいてん焼は1個100円!安い上に、美味しい。
かいてん焼は1個100円!安い上に、美味しい。
 まさに川俣の懐かしの味の一つなのでしょう。因みにご主人がもう一つ焼いているのは、たこ焼き。まん丸でなく、ちょっと鈴のような形をしている理由は、ご主人も「よく分からない」そうですが、お父さん譲りの作り方だそうです。食べると、中がとろっとしていて、その中から歯応えと存在感のあるタコがこんにちは。しかも「味付きタコ」を使っているので、最後にタコが口の中に残っても、噛むたびに旨味が出てきます。

 話も一段落すると、ご主人、店の前の川に向かい、「かいてん焼」の生地をちぎって川に投げます。川にいるのは…

御主人、店の前の広瀬川に出ると、かいてん焼をちぎっては投げた。
御主人、店の前の広瀬川に出ると、かいてん焼をちぎっては投げた。
 鴨です。
「きょうは1羽しかいないけど、多い時は20羽以上いますよ。」
 鴨は川上に投げ込まれて流れてくるかいてん焼の生地を、水中に嘴を突っ込んで巧く食べています。この日はまさに独り占めです。それにしても、かいてん焼を食べられるなんて、鴨の舌も肥えちゃいますね。
 隣にいらっしゃる女性は、奥様。すると
「隣で、喫茶店をやっているんです。」

川には1羽の鴨が。上手に啄む。多い時には20羽以上集まる。
川には1羽の鴨が。上手に啄む。多い時には20羽以上集まる。
 喫茶店「アリカ」と「かいてんや」は、同じ屋根の下の店。境の戸を開ければ、お互いの店を行き来できるのです。折角なので、後程お昼ご飯で伺う事にします。

「アリカ」と「かいてんや」は、扉1枚開ければ行き来できる。
「アリカ」と「かいてんや」は、扉1枚開ければ行き来できる。
 さてお二人に川俣町に何か話題が無いか伺うと、
「『コスキン・エン・ハポン』を実施している人の一人を知っていますよ。連絡をとってみますか?」
との事。ご主人が電話をかけて下さり、承諾をとってくれました。
「この近くなので、案内しますよ。」
と、わざわざその方の所まで連れて行って下さいました。

わざわざ、電話でアポをとってくださるご主人…。
わざわざ、電話でアポをとってくださるご主人…。
 『コスキン・エン・ハポン』とは、川俣町で開かれている南米音楽のフォルクローレ(民族音楽)の祭典の事で、今年で45回目を数える催しです。コスキンとは、南米アルゼンチンの町の名前。こちらも南米音楽の祭典で年に1度賑わう町で、しかも人口等川俣に似通った部分もあるとの事で、「日本のコスキン」と位置づけ、その意味のスペイン語『コスキン・エン・ハポン』と名付けて、愛好家の集まる祭典を開いてきました。その南米音楽の愛好家で、祭典の発展に力を尽くしてきた人の一人が、こちらの齋藤さんです。

店をあけて、わざわざ案内まで…。ご主人の優しさに、感謝!
店をあけて、わざわざ案内まで…。ご主人の優しさに、感謝!
「最初の年は13団体が参加したんですが、いまや200団体を超えます。審査などは一切しません、演奏のレベルも関係ありません、参加したい方が皆参加できるのが、コスキン・エン・ハポンの特徴なんです。」
 その為1団体2曲10分までと決められていますが、それでも参加する団体は増え続けています。
「学生の頃に南米音楽のサークルで参加した人が、就職でばらばらになっても、ここに来れば知っている人に再会できるんです。コスキン・エン・ハポンは、フォルクローレが好きな人の『出会いの場』、そして『再会の場』なんです。」
 今年はメーン会場以外にも会場を設けて、開催するそうです。街歩きをしながら、南米音楽を楽しめます。

「コスキン・エン・ハポン」の実行メンバーの1人、齋藤さん。快く色々教えて下さった。
「コスキン・エン・ハポン」の実行メンバーの1人、齋藤さん。快く色々教えて下さった。
 なお今では川俣町の子どもは、小学4年になると授業で縦笛「ケーナ」の吹き方を教わります。
「川俣で生まれ育った今の30代より若い人は、必ずケーナを吹きますね。」
 その為、川俣町の小学校に勤務する先生は、児童に教える前にケーナを習うそうです。児童もほとんどの子が1回の授業で吹けるようになるとか。
「徳光さんも、やってみませんか?」
 しかし、巧く音が出ません。
「頬は膨らませない方が好いですよ。」
と教えてくださいました。息を中に強く吹き込むと、たま~にですが、ちらっと音が出ます。その時は、息の「抜け」が凄く良いんですね。これが続くと演奏に繋がるのでしょうが、その「ツボ」がなかなか掴み切れません。齋藤さん曰く
「う~ん、センスの問題だね、あっはっは。」
と冗談めかして(?)鋭い指摘が…。結局何回か、数秒に分けて、それらしい音が出ただけでした。

ケーナを吹く齋藤さん。綺麗な音色を奏でる。
ケーナを吹く齋藤さん。綺麗な音色を奏でる。
 齋藤さんはその後、我々の無茶ぶりに応えてくださり、本場のポンチョを着て演奏してくださいました。
「徳光さんは、これをどうぞ。」
 リズムをとる楽器「チャフチャス」です。ヤギの爪で出来ているそうで、一個一個の中の空洞に響いて、乾いた高い音が出ます。いわば、カスタネットやタンバリンの類ですね。

ポンチョを着た齋藤さんが私に勧めたのは、チャフチャス。
ポンチョを着た齋藤さんが私に勧めたのは、チャフチャス。
 私は齋藤さんの演奏に合わせて、チャフチャスを振ります。斎藤さんの音色も素晴らしければ、見た目もまさに本場、目の前にコスキンが出現した!という感じがします。一応、合奏できた…という事で好いですかね。
 ただ実はこの撮影場所では、私よりもずっとリズミカルな音が聞こえていました。機織り機の音です。(つづく)

齋藤さん、『コンドルは飛んでいく』を演奏。私は右手でシャッターを切りながら、左手でチャフチャスをちゃっちゃっ…
齋藤さん、『コンドルは飛んでいく』を演奏。私は右手でシャッターを切りながら、左手でチャフチャスをちゃっちゃっ…
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