2002.06.20
ワールドカップよもやま日記
ワールドカップもいよいよベスト8の激突です。残念ながら日本も、福島県のJヴィレッジにキャンプしていたアルゼンチンも敗れてしまいました。県民がテレビ観戦でそれぞれのチームを応援する様子を中継リポートしてきただけに、余計に残念に感じます。
そこで、今回はワールドカップにからんだ日記です。
その1 将来を見据えたアルゼンチン
今回たまたまゴジてれシャトルでアルゼンチンコーナーの放送担当となった私は、何度となくJヴィレッジに取材や中継で足を運びました。Jヴィレッジにはひと目アルゼンチン代表を見ようと熱心なファンが訪れていたのですが、宿舎や練習ピッチに立ち入る事は勿論、近づく事も出来ません。アルゼンチン選手が非公開練習でピッチに出ても、一般道の歩道から望む程度です。でも遠くて、小さく霞むようにしか見えないんですねぇ(肉眼ではっきり確認できるのは、ベロン選手ぐらい。頭を見れば分かりますからね)。それでも見られれば比較的ラッキー。ファンの中にはマスコミが練習時間を把握していると思って「練習は何時からですか?」と聞いてくる方もいるのですが、実は基本的に練習時間の情報はマスコミにも無いので「我々も知らないんですよ。」と答えると、何とも残念そうな顔をされてしまいます。因みにビエルサ監督は練習後、道路沿いのピッチに一人姿を現し、黙々と走る姿を何度か見ました。あの時は走りながら、誰を先発に使うか…なんて考えていたのかも知れません。
そんなアルゼンチン代表は今回、若い年代のユースチームも同行させていました。ペッケルマン総監督は、「本番に向けて代表チームの調整相手をさせる事も出来るし、何より将来の代表選手へと育てるプロセスとして、代表チームと一緒にキャンプする事にした。」と話していました。確かに練習を見ていると、代表とユースは別メニューだったり、内容が同じでも別々に行っていたりもするのですが、アルゼンチンのユースのメンバーにとっては、将来のフル代表を目指す上で非常に貴重な経験だったと思います。帯同する事で、ワールドカップに出場した時の雰囲気(マスコミの取材等も含めて)を直に味わい、代表チームの練習を間近に見、時に練習の相手にもなり、しかも同じ場所でキャンプをしているんですから。日本代表もこういう機会に、ユースの代表選手を帯同させたら良いのでは?と思いました。刺激は勿論ですが、代表選手と顔見知りになればいつ代表チームに呼ばれてもすんなり入っていけるでしょうし、世代交代が必要な時もスムーズに出来るのではないでしょうか。五輪の時も、一つ下の年代のユース選手を帯同させれば、国際大会の雰囲気もつかめようと言うものです。
その2 日本が負けた日の福島大学
日本対トルコの試合の日、私は福島大学の生協食堂にお邪魔していました。学生がテレビを観て応援するというので中継に行ったのです。
テーブルの大半をどかして画面前に用意された400近い椅子の大半が埋まり、テレビを観やすい位置で立ち見する人も出て、外の梅雨寒とは無関係の熱気です。3時前に発表になったスタメンを「ザ・ワイド」で確認して、歓声とどよめき。そしてワールドカップの中継に。
もう勝手にニッポンコールは起こるし、既に上半身裸の男子学生はいるし、試合開始直前には画面前で何故か逆立ちをする学生も…。ところがその学生がバランスを崩して倒れた拍子に、試合直前の様子が映し出されていた画面が真っ暗に。学生から「え〜〜っ!?」という驚きの声と悲鳴、すぐさまブーイング。どうもその学生が電源だか配線だかを抜いてしまったらしい。平身低頭の学生。試合開始まであと僅か。そこですかさず「生協!(ちゃちゃちゃ)生協!(ちゃちゃちゃ)」の生協コール。即、生協の田中さん(←テレビ観戦企画者)などが配線などをチェックし、数分後「時刻をセットしてください」の文字とともに中継画面が復活し、再び大歓声。ぎりぎり中継に間に合いました。
その後は歓声、ため息、歓声、ため息の繰り返しで実況は殆ど聞こえない状態となりました。ところが12分に先制された瞬間は、どよめき、そして一瞬実況が聞こえるほどの静寂。しかし思い直したかのように日本コールが始まり、熱い応援の再開。試合が進むにつれて講義を終えた学生が更に集まりだし、知り合いを見つけては声をかけ、「何、リードされてるの?」と試合展開に驚いた様子を見せていました。
後半も残り15分を切るあたりから、応援を忘れじっと画面を見つめる学生が増え始めます。時折静寂を破るように「がんばれぇ!」「がんばって。」と単発の声援ともつぶやきともとれる声が漏れ聞こえます。手を合わせて祈るように見つめる女子学生もいます。椅子に深々と腰をかける学生はなく、皆、前のめり気味です。
そして、無情のホイッスル。
ベスト8進出を果たせないと決まった瞬間、学生からはため息が一斉にもれ、半信半疑のようにじっと画面を見入っていました。もう涙ぐむ学生も…。結局それから15分ほど立ち上がる学生は殆どおらず、日本の敗戦がはっきり認識できた学生から徐々に席を離れはじめ、日本代表ユニフォームを着た学生2人がお互いのユニフォームを交換して拍手が起きると、熱い応援は終わりました。
感心したのは、その後。電気がつけられ応援が一段落すると、学生達が各自、椅子とテーブルを元の位置に並べ、ごみまで集め始めた事です。粛々と、協力しながらいつもの生協食堂の姿に戻していきます。ま、当たり前の事と言われればそれまでですが、今は当たり前の事が当たり前に出来ない時代(例えば、今年の開成山公園の花見のあと。あの散らかりようはひどかった)。福島大学の学生は、なかなか立派でした。
「もし勝っていたら、」と生協の田中さん。「次は食堂じゃなくて、外で学生の皆さんに日本を応援してもらおうって考えていたんです。外の壁に映像を大写しにして、って思っていたんですが…。う〜〜ん、実現できなくて残念ですねぇ。」
ドーハの悲劇→フランス大会出場するも、予選リーグ3敗→今年予選リーグトップ通過も、トーナメント1回戦敗退→ドイツ大会、日本代表はトーナメント…。
この先には、きっとまたステップアップした日本代表の活躍があると信じています。日本代表、ありがとう!
そこで、今回はワールドカップにからんだ日記です。
その1 将来を見据えたアルゼンチン
今回たまたまゴジてれシャトルでアルゼンチンコーナーの放送担当となった私は、何度となくJヴィレッジに取材や中継で足を運びました。Jヴィレッジにはひと目アルゼンチン代表を見ようと熱心なファンが訪れていたのですが、宿舎や練習ピッチに立ち入る事は勿論、近づく事も出来ません。アルゼンチン選手が非公開練習でピッチに出ても、一般道の歩道から望む程度です。でも遠くて、小さく霞むようにしか見えないんですねぇ(肉眼ではっきり確認できるのは、ベロン選手ぐらい。頭を見れば分かりますからね)。それでも見られれば比較的ラッキー。ファンの中にはマスコミが練習時間を把握していると思って「練習は何時からですか?」と聞いてくる方もいるのですが、実は基本的に練習時間の情報はマスコミにも無いので「我々も知らないんですよ。」と答えると、何とも残念そうな顔をされてしまいます。因みにビエルサ監督は練習後、道路沿いのピッチに一人姿を現し、黙々と走る姿を何度か見ました。あの時は走りながら、誰を先発に使うか…なんて考えていたのかも知れません。
そんなアルゼンチン代表は今回、若い年代のユースチームも同行させていました。ペッケルマン総監督は、「本番に向けて代表チームの調整相手をさせる事も出来るし、何より将来の代表選手へと育てるプロセスとして、代表チームと一緒にキャンプする事にした。」と話していました。確かに練習を見ていると、代表とユースは別メニューだったり、内容が同じでも別々に行っていたりもするのですが、アルゼンチンのユースのメンバーにとっては、将来のフル代表を目指す上で非常に貴重な経験だったと思います。帯同する事で、ワールドカップに出場した時の雰囲気(マスコミの取材等も含めて)を直に味わい、代表チームの練習を間近に見、時に練習の相手にもなり、しかも同じ場所でキャンプをしているんですから。日本代表もこういう機会に、ユースの代表選手を帯同させたら良いのでは?と思いました。刺激は勿論ですが、代表選手と顔見知りになればいつ代表チームに呼ばれてもすんなり入っていけるでしょうし、世代交代が必要な時もスムーズに出来るのではないでしょうか。五輪の時も、一つ下の年代のユース選手を帯同させれば、国際大会の雰囲気もつかめようと言うものです。
その2 日本が負けた日の福島大学
日本対トルコの試合の日、私は福島大学の生協食堂にお邪魔していました。学生がテレビを観て応援するというので中継に行ったのです。
テーブルの大半をどかして画面前に用意された400近い椅子の大半が埋まり、テレビを観やすい位置で立ち見する人も出て、外の梅雨寒とは無関係の熱気です。3時前に発表になったスタメンを「ザ・ワイド」で確認して、歓声とどよめき。そしてワールドカップの中継に。
もう勝手にニッポンコールは起こるし、既に上半身裸の男子学生はいるし、試合開始直前には画面前で何故か逆立ちをする学生も…。ところがその学生がバランスを崩して倒れた拍子に、試合直前の様子が映し出されていた画面が真っ暗に。学生から「え〜〜っ!?」という驚きの声と悲鳴、すぐさまブーイング。どうもその学生が電源だか配線だかを抜いてしまったらしい。平身低頭の学生。試合開始まであと僅か。そこですかさず「生協!(ちゃちゃちゃ)生協!(ちゃちゃちゃ)」の生協コール。即、生協の田中さん(←テレビ観戦企画者)などが配線などをチェックし、数分後「時刻をセットしてください」の文字とともに中継画面が復活し、再び大歓声。ぎりぎり中継に間に合いました。
その後は歓声、ため息、歓声、ため息の繰り返しで実況は殆ど聞こえない状態となりました。ところが12分に先制された瞬間は、どよめき、そして一瞬実況が聞こえるほどの静寂。しかし思い直したかのように日本コールが始まり、熱い応援の再開。試合が進むにつれて講義を終えた学生が更に集まりだし、知り合いを見つけては声をかけ、「何、リードされてるの?」と試合展開に驚いた様子を見せていました。
後半も残り15分を切るあたりから、応援を忘れじっと画面を見つめる学生が増え始めます。時折静寂を破るように「がんばれぇ!」「がんばって。」と単発の声援ともつぶやきともとれる声が漏れ聞こえます。手を合わせて祈るように見つめる女子学生もいます。椅子に深々と腰をかける学生はなく、皆、前のめり気味です。
そして、無情のホイッスル。
ベスト8進出を果たせないと決まった瞬間、学生からはため息が一斉にもれ、半信半疑のようにじっと画面を見入っていました。もう涙ぐむ学生も…。結局それから15分ほど立ち上がる学生は殆どおらず、日本の敗戦がはっきり認識できた学生から徐々に席を離れはじめ、日本代表ユニフォームを着た学生2人がお互いのユニフォームを交換して拍手が起きると、熱い応援は終わりました。
感心したのは、その後。電気がつけられ応援が一段落すると、学生達が各自、椅子とテーブルを元の位置に並べ、ごみまで集め始めた事です。粛々と、協力しながらいつもの生協食堂の姿に戻していきます。ま、当たり前の事と言われればそれまでですが、今は当たり前の事が当たり前に出来ない時代(例えば、今年の開成山公園の花見のあと。あの散らかりようはひどかった)。福島大学の学生は、なかなか立派でした。
「もし勝っていたら、」と生協の田中さん。「次は食堂じゃなくて、外で学生の皆さんに日本を応援してもらおうって考えていたんです。外の壁に映像を大写しにして、って思っていたんですが…。う〜〜ん、実現できなくて残念ですねぇ。」
ドーハの悲劇→フランス大会出場するも、予選リーグ3敗→今年予選リーグトップ通過も、トーナメント1回戦敗退→ドイツ大会、日本代表はトーナメント…。
この先には、きっとまたステップアップした日本代表の活躍があると信じています。日本代表、ありがとう!
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