【神尾佑酒に交われば】度重なる災害にも「七転び八起き」の精神で3年連続金賞受賞！白河市の「千駒酒造」

Chu! PRESS

#千駒酒造 (1件)

2023.08.23

福島県出身の俳優・神尾佑（ゆう）さんが県内の酒蔵を訪ね、その酒蔵にまつわる物語を紐解いていく番組「神尾佑酒に交われば」。

日本酒王国福島県には、50を超える酒蔵がある。今回訪れたのは、白河市の「千駒酒造」。全国新酒鑑評会で金賞を受賞した酒に隠された物語とは？

幸運の象徴である「鶴亀松竹梅」が顔に描かれている

白河市といえば「白河だるま」。だるまには、どんな困難に遭おうと何度でも立ち上がる”七転び八起き”の精神が宿っているという。

三重櫓が出迎えてくれる「小峰城」

そして、白河の誇りでありシンボルの「小峰城」。東日本大震災では、自慢の石垣が10か所にわたって崩れ落ちたが、文献や写真をもとに5年の歳月をかけて見事復活、起き上がった。

予約すれば無料で見学ができる

みちのくの玄関口である白河市は、江戸時代から続く城下町。ここで大正12年に創業したのが「千駒酒造」だ。かつて馬市が盛んだった地で、「若駒のようにたくましくあれ」と「千駒」と名付けられた。

梅の実のヘタ取り作業

寒仕込みの時期以外は、梅酒や焼酎を造っている。訪れた日は、梅酒造りの真っ最中。佐賀県産の南高梅のヘタを一つひとつ取っていく作業を、神尾さんもお手伝いしてみることに。こういう作業は「嫌いではない」ようだ。

最初は緑がかった色をしていたが…

杜氏の菊地忠治さんが「どうせ造るなら、ほかにない付加価値のあるもの」と話すように、最高の酒である純米大吟醸に漬け込むという「プレミアム梅酒」。氷砂糖もプラスして1年寝かせると、キレイな琥珀色に輝く梅酒が仕上がる。

思わず頬がゆるむほどの一杯がここに！

梅の良い香りが広がる、飲みやすい梅酒。まろやかで甘いが、イヤな甘さではない。これが純米大吟醸の力だ。

右側が杜氏の菊地忠治さん

一方、焼酎で人気なのは、酒米と極上のサツマイモで醸した醪（もろみ）を蒸留した、香り高いものだ。全国的にもめずらしい米と芋の焼酎「いちぶん」は、販売するとすぐに売り切れるという。

ツンとくる感じが全くなく、甘い

米の香りに加えて、ほのかに芋の香りと甘みが感じられる。「ツンとくる感じが全くなく甘いため、飲みやすい」と神尾さんは話す。

感謝の思いが詰まった自信作

そして、全国新酒鑑評会において3年連続で金賞を受賞した「千駒大吟醸」。鼻から抜ける香りに、広がるフルーティーな味わい…「贅沢なものをいただいている感じがする」と神尾さんも納得の一杯だ。

震災を北海道の酒米で乗り切った

この酒に隠された”七転び八起き”の物語は、使っている酒米にある。東日本大震災・原発事故の影響で、それまで使っていた福島の米が全袋検査を受けなければならなくなった。しかし、最初に検査するのは「食用の米」。酒米や加工米の順番を待っていると、酒造りに間に合わない。他県をあたるも、酒米は契約栽培が多く、門前払いが続くことに…急な入手は困難を極めた。

社長の櫻井慶さん

そんな中、知人を通じて、藁をもすがる思いでたどり着いたのが、北海道の酒米だった。当初は「なかなか難しいね」と言われていたが、杜氏や蔵の思いを伝えたところ「なんとかやってみましょう！」という言葉をもらうことができた。

恩返しの思いが、見事な形に

そして、「このご恩は、一生忘れることができない。北海道の酒米で金賞を獲れたら何よりの恩返しになる！」という強い思いでチャレンジし続けてきた結果、実現した3年連続の金賞受賞。苦難から見事に立ち上がった、まさに”七転び八起き”の酒だ。

震災、そして大雪による被害が立て続けに…

震災は、白河市の文化財となっている築100年の酒蔵にも大きな被害をもたらした。崩れてむき出しになり、土壁が出てきてしまった壁。応急処置をして、その年は酒造りを終えることができたが、翌年2月の大雪で瓦が落ちてしまう被害も。

幾度となく苦難から救ってくれた

しかしここには、度重なる災難に見舞われても、決して涸れることがなかった”命の水”がある。創業当時からある25mほどの深さの井戸。那須連山からの伏流水で、酒の仕込みも瓶詰もすべてこの水で賄っている。良い水は醸造業を育むため、近くには醤油蔵やほかの酒蔵も。

店長の久保田由紀子さんがリニューアルに携わる

そんな蔵などを巡る街歩きの中で「気軽に立ち寄ってもらえる店」を目指してリニューアルしたのが、売店だ。商品棚は木桶の蓋、支柱は櫂棒など、酒造りの道具を活用しているオシャレな空間。地元で造られた味噌や醤油、野菜、さらに小物も並ぶ。

酒蔵の入りづらいイメージを払拭

では、最後にもう1杯、「千駒純米吟醸うすにごり白かしこみもうす」をいただくことにしよう。福島県産の酒米「福乃香」を使い、白河地方の総鎮守・鹿嶋神社で祈願した酒だ。ろ過した酒とほとんど変わらないが、少しだけ酒粕を残しているのが特徴的。お供には、地元「大島屋蒟蒻店」の「刺身こんにゃく」がよく合う。

飲みやすいので、どんどん飲み進めてしまう…

ちなみに、自信作の「千駒大吟醸」のお供には、地元の素材をたっぷり使った「白河高原清流豚のソテー酒粕入りディップソース添え」をいただいた。酒粕に漬け込んだ肉は柔らかくなり、野菜は旨みが増す。酒粕のパワーを感じると同時に、白河という地の豊かさと底力を感じられる訪問となった。

Chu!PRESS編集部

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