２月９日、会津若松市で積雪地域の活性化について意見を交わすシンポジウム「ゆきみらい2023in会津」が開かれました。このイベントのパネリストとして福島中央テレビの永井麻葵アナウンサーが参加し、情報番組で天気キャスターを務める立場から「生活者目線で雪国の困りごとを解決できるように情報発信していきたい」と意見を述べました。

このイベントは雪国が抱えるさまざまな課題解決を目指すとともに、雪国ならではの歴史や文化を未来に継承しようと、北海道、東北、北陸地方を会場に持ち回りで開催されているものです。ここ数年は新型コロナの影響でオンラインによる開催でしたが、今年は会津若松市で３年ぶりにリアル開催となりました。

その会津若松といえば全国的にも注目される取り組みがあります。それは、市全体で「スマートシティプロジェクト」に取り組んでいること。全国から様々なＩＴ企業が集まり、官民連携でＩＣＴ（情報通信技術）を活用したまちづくりが進められています。

シンポジウムでは、その中心的な存在となっているアクセンチュア株式会社・イノベーションセンター福島の海老原城一さんが講演しました。海老原さんは、大雪が降った日に除雪車がどこで稼働しているかがリアルタイムに分かるサービスなど、雪国ならではのデジタル技術の活用例を紹介した上で、地域に蓄積している様々なデータを最大限に使って、「市民にも企業にも地域にもメリットがある“三方良し”の社会構築を目指したい」と話しました。

続いて行われたパネルディスカッションには、福島中央テレビの永井麻葵アナウンサーも参加しました。就職を機に神奈川県から福島県に移住した永井アナウンサーは「雪には災害につながる怖さもありますが、スキーや氷上でのワカサギ釣りなど楽しいアクティビティや雪があるからこそ見られる絶景など、人々に豊かさをもたらす存在でもあると感じます。」と話しました。

また、天気コーナーで除雪作業による事故を防ぐための注意点をどう伝えるかについて「専門家に聞くと“除雪作業は２人以上でやること”と言いますが、実際に会津の人に話を聞くと地域の過疎化や高齢者の一人世帯が増えている現状があり、“１人でやるしかない”という声がありました。生活している人の声を聞かないと本当に必要な情報が何なのかを伝えられないと感じています。」と話しました。

これに対し、パネリストとして参加した会津若松市役所企画政策部の本島靖さんは「現在、『会津若松プラス』という地域情報を発信するインターネットサイトを運営していますが、地域に住むひとりひとりに寄り添ったサービスをしていきたいです。大都市に比べて人が少ない地域は集団のニーズができにくいので、都市部で便利なものが地方には当てはまらないものも多いと思います。ただ、逆に地方で便利なものは都市部での生活に役立つものもあると思う。」と話しました。

また、磐梯町で地方創生事業に携わる星久美子さんは、「誰かの不便さはビジネスチャンスにもつながるもの」と話した上で、月額３９，６００円で会津地域を含む全国約５０か所の拠点を使い放題にでき、泊まって働いて地域交流ができるサービスについて紹介しました。

一方、システム開発会社でデジタル社会サービス企画を手掛ける岡山純也さんは、会津若松市が導入を進めているデジタル地域通貨の「会津財布」や「会津コイン」の取り組みを紹介しました。岡山さんは、人手不足と高齢化で落ち葉拾いの負担が大きくなっている東山温泉の課題について「将来的にはデジタル地域通貨と労働力の価値交換ができる仕組みを作り、共に助け合う地域づくりを目指したい」と話しました。

こうした情報共有を受けて永井アナウンサーは「テレビだけではなくインターネットも活用して、地域それぞれの困りごとや自治体や企業の取り組みを取材して、それをわかりやすく伝えていきたい」と意気込みを話しました。

シンポジウムではこのほかにもさまざまな意見が交わされ、海老原さんは「デジタルは万能ではないが、個別のサービスを提供できる良さがあります。人口減少で課題も多様化する中で、デジタルを活用していくことで、地方から全国へ“豊かさ”を提供できるチャンスです。」と話しました。

宝もあれば課題もある雪国。
シンポジウムに参加した人たちは、スマートシティプロジェクトを進める会津若松市の取り組みを学びながら、雪国のこれからの未来の在り方について考えを深めていました。