2021.08.13
a book on “CINEMA Paradiso” in Motomiya City
今月は福島県内も新型コロナウイルスの感染増加がとまらず、夕方の『ゴジてれChu!』で私も担当している「ぶらカメ」のコーナーは、不特定多数の人と触れ合う内容の為暫くお休みです。そんなコロナ禍の中、安全に楽しめるものの一つが読書です。きょうは「ぶらカメ」に因んだ本を一冊ご紹介します。
小窓から見えるのは、懐かしの映写機。 |
福島県の中部に位置する本宮市にお邪魔したのは、1年半前の去年2月。JR本宮駅前から歩いて最初の大通りを折れてぶらぶらしていると、路地の奥にニュースなどでよく見かける古い映画館がありました。「本宮映画劇場」です。存在は知っていましたが、実際に見たのはこの時が初めて。劇場に向かって進んでいると、声を掛けられます。
路地から見えた「本宮映画劇場」。 |
本宮映画劇場の持ち主、田村修司さんです。ロケ中だと分かってわざわざ声を掛けて下さり、劇場の中を案内して下さいました。その時は東日本台風の被害に遭った翌年、フィルムも阿武隈川を溢れた泥水に浸かり、大変な状況でした。
田村さんは、劇場内を案内して下さった。 |
本宮映画劇場。震災も台風も生き残った。 |
その後ご自宅にもお邪魔した時にお会いしたのが、娘の優子さん。故郷に帰ってきたのとたまたま重なり、お会いする事が出来ました。優子さんも映画が好きだという話を伺いました……
というのが、「ぶらカメ」でのお二人との出会いの話。
その時のぶらカメのブログはこちら
娘の優子さんと出会った時のエピソードはこちら
というのが、「ぶらカメ」でのお二人との出会いの話。
その時のぶらカメのブログはこちら
娘の優子さんと出会った時のエピソードはこちら
娘の優子さんと。 |
本宮映画劇場前で。 |
あれから1年4か月後、今年の6月末に中テレの私宛てに葉書が届きました。娘の優子さんからです。葉書には「場末のシネマパラダイス 本宮映画劇場」と力強く書かれた文字の下に、お父さん修司さんのイラスト!?
梅雨の頃届いた一通の葉書…。 |
実は、優子さんが本宮映画劇場の本を出版。ロケで出会った私に、わざわざ葉書を下さったのです。
写真と文を優子さんが担当。娘さんだからこそ知っているお父さんの素顔や人柄が伝わる文章の温かさもさる事ながら、やりとりの軽妙さがちょっとしたコントのように面白い。修司さんの語り口が「おもしゃぐねー」などの方言丸出しで、それがまた県民には親しみがわきます(イントネーションまで思い浮かぶ)。
また優子さんも聞き上手で、自分の思い出をきっかけに探っていくものだから、本宮映画劇場の歴史が深掘りされつつ、紐解かれていきます。
写真と文を優子さんが担当。娘さんだからこそ知っているお父さんの素顔や人柄が伝わる文章の温かさもさる事ながら、やりとりの軽妙さがちょっとしたコントのように面白い。修司さんの語り口が「おもしゃぐねー」などの方言丸出しで、それがまた県民には親しみがわきます(イントネーションまで思い浮かぶ)。
また優子さんも聞き上手で、自分の思い出をきっかけに探っていくものだから、本宮映画劇場の歴史が深掘りされつつ、紐解かれていきます。
7月には県内の新聞の書評でも紹介され、店頭に並んだ。早速購入。 |
劇場内が似合っている… |
修司さんのお父さん、寅吉さんが経営者になる前の劇場誕生から、二代目修司さんの創意工夫による手作り感満載の劇場の裏側や苦労話などのエピソード、古い地方の映画館だからこその映画のコアでディープでニッチな話題、そして世のお父さん方が求める娯楽の「需要」を供給してきた話も含め、町の「劇場」として果たしてきた役割まで見えてきます。上映フィルムや或る職業婦人の「掛け持ち」の話など、劇場を通して垣間見える昭和という時代や世相が浮かび上がってくるのです。
本宮映画劇場の中。 |
2階席・3階席が埋まった事も…。 |
更には「よい映画」を子ども達に見せようと当時のお母さんたちが呼び掛けた地元の「本宮方式映画教室」運動や、その裏で劇場が直面した現実や挫折、そして劇場の復活までの道のり、それに加えて令和に襲われた東日本台風の危機、そこに差し伸べられた温かい手の数々…。一難去ってまた一難を乗り越えていく劇場と、劇場に関わってきた人の姿が、大正・昭和・平成・令和の時代を活写しつつ綴られています。我々が子どもの頃ただただ楽しんでいた映画館の裏側は、想像以上に大変で(苦労されている方々には申し訳ないが)興味深く面白い。
今も残る電光看板。 |
椅子の背もたれは木だ。 |
またこの本の特色は、写真がカラー・白黒を含め豊富(←これも昔の映画風に言えば「パートカラー」と表現できるだろうか)。というのも、ポスターやチラシ、映写機からゴム印まで、劇場に多くの“史料”が残っているからで、それらの写真を眺めているだけでも私世代はレトロで、懐かしく、それでいて新鮮に感じられます。
映写機は現役。 |
今の劇場内には、昔の幟やポスター、写真等が残っている。 |
『場末のシネマパラダイス 本宮映画劇場』は筑摩書房から出ています。アウトドアを楽しむには微妙な天気が続きます。小難しくない面白い本をお探しの方には、お勧めかも。読み終わると何だか元気が出る一冊です。
(※今回のブログの写真は、葉書と本を除いてロケ当時に撮影したものです。)
(※今回のブログの写真は、葉書と本を除いてロケ当時に撮影したものです。)
ポスターの脇などに掲げたのだろうか。 |
台風で水没したフィルムは、こうやって汚れを落としたという。 |
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