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徳光 雅英
徳光 雅英Masahide Tokumitsu
Episode in Nihonmatsu 5
 『小松美羽展』のエピソードの続きです。
 ライブペイントは、大山忠作美術館と同じ階の市民ギャラリー側に現在も展示されています。当日の入場券を見せると、入れます。
 手前には、小松さん直筆のメッセージが(詳しくは実際に行って、見て下さい)。そして反対側の奥には、小松さんの着ていた白装束も。
 ライブペイントを守るように、『拒魔犬』の絵が22枚、囲むように展示されています。


今のライブペイントの展示場。手前には小松さんからのメッセージが。
今のライブペイントの展示場。手前には小松さんからのメッセージが。
 10月7日ライブペイントの当日、小松さんに話を聞く事が出来ました。我々は放送する前に、取材映像からインタビューを文字に起こすのですが、今回はYディレクターが文字にしたインタビューを、出来るだけ小松さんの口調も残しつつ、未放送分も含めてご紹介しましょう。
 昔話や民話が好きな小松さんは、かつて福島県に来た時に黒塚に行ったそうです。
「興奮しました。住んでいた岩とか残っているじゃないですか。(今は)民家がひしめく中、『昔はここに川が流れていたんだろうな』とか、色々想像しました。」
 ライブペイントの際には、どういう思いでキャンバスに向かうのでしょうか?
「二本松に来てたくさんの人に協力していただいて、今があります。本当に感謝の気持ちと、(二本松の)氏神様とつながって描いていくということで、神事みたいな気持ちでやらせていただきます。祈りを込めてぶつけていく姿をぜひ福島のたくさんの人に見ていただけたらいいなと思っています。」
 前日には、南相馬市や浪江町も回ってきたと言います。
「小さい頃からそういうお話(民話・昔話等)が好きだからか、(福島は)憧れていた場所でもありますし、なんかまだ河童がいるような気配があるような場所がすごく残っていて、本当に愛が込められている、なんか自然の中にそういう光をつまんでいく作業が、福島で出来るんじゃないかなと思っています。
 南相馬や浪江に行って、帰宅困難区域の向こう側はやはり人の気配って感じられなくなってはいるんですけども、やはりその土地には氏神様がいらっしゃいますので、『どうか力をお貸しください』とお祈りをしてきました。」
 因みに描く前に、イメージは固まっていないのだと言います。
「3枚に描くっていうのも初めてですし、基本的に狛犬だと対の作品が多いんですけど、こういう奇数の作品というのは初めてなので、何かまたひとつ昇華できるものがあればいいなと思っています。」


10月7日、カメラマンの奥に小松さん。ライブペイントが始まった。
10月7日、カメラマンの奥に小松さん。ライブペイントが始まった。
 ライブペイント当日は、整理券をとれて着席できた人から、立ち見の人で、会場にはまさに人垣が出来ていました。その人垣の中に、ビニールで養生された所にキャンバスが3枚立てかけられ、キャンバスを囲むように半円状にアクリル絵の具のチューブが22種類、250本置かれてあります。
 私は取材の為にキャンバスの脇にいたのですが、小松さんを案内するスタッフの方から、控室から小松さんが出てくる時だけ「控室のドアを開けたまま、押さえておいてもらえますか?」と頼まれ、キャンバスの真裏にある控室の戸を、登場直前、半開きのまま押さえていました。すると、戸の隙間から、アキレス腱を伸ばす小松さんの足首が見えます。準備運動とともに気合が入っていくのでしょう。
 登場した小松さんは、真っ白な装束で登場すると、キャンバスに向かって合掌し精神を集中させ、一気に描き始めます。
 両端の2枚には、菊の花を描きます。二本松市は菊人形・千輪咲き等、菊で有名な所です。でもその描いた菊の上に、小松さんは別の物を描いていきます。小松さんは絵の具を取りに行ってキャンバスに戻る刹那だけで全体像を捉えると、あとはキャンバスに顔がつくのではという距離感で絵を描きます。
 最初は筆を使っていましたが、段々掌をパレットのようにして絵の具を混ぜたり、その手を筆代わりに線を描写したり、絵の具のついた手を振り下ろしてキャンバスに絵の具を飛ばしたり、絵の具のチューブから直接絞り出しながら描いたりと、自由です。足元に使い終わったチューブがあると邪魔なので、描いている最中はぽんぽんチューブを絵から離れる方向へ放り投げていきます。そのチューブや絵の具を避ける為、最前列の人は、水を使う芝居よろしくビニールシートを持っているのですが、それを超えて客席に絵の具のチューブが飛んでいきます。近くで撮影する取材陣は、髪の毛も服も絵の具まみれ。中にはこのライブペイント取材用に、既に絵の具だらけの服を着てくる常連と思しき方もいます。
掌がパレットになったり、筆代わりになったりする。
掌がパレットになったり、筆代わりになったりする。
 更に、小松さんは真ん中のキャンバスの上の養生したビニールに、紫色で山のようなものを描きます。もう描きたいものがキャンバスには収まり切りません。しかも山のようなものを描くと、その塗った絵の具を、両手のひらで下のキャンバスまで塗りながら下してきます。一体、どんな絵が仕上がるのでしょう?観客は固唾を飲んで、真剣な表情で見入っています。まさに聖なる空間での聖なる出来事が、ライブペイントといった感じすらします。
 約1時間10分、最後に筆ですらすらっと河童や菊等を描き、観客に向かって正座して拝み、ライブペイントが完成しました。


絵の具のチューブを絞っては投げ、絞っては投げ、絵が出来上がっていく。
絵の具のチューブを絞っては投げ、絞っては投げ、絵が出来上がっていく。
 小松さんはこの後、1時間以上かけてファンにサインを認め、その後に、お疲れのところインタビューに答えて下さいました。白装束の特に袴の部分には、絵の具が隙間の無いほどついています。「凄い事になるんですね」と言うと、小松さんは「お恥ずかしい」と言いながら、足の方をさすっていました。その手も絵の具色です。
 描いた後の率直な気持ちから伺いました。
「あ、すごい楽しかったです。皆さんに協力してもらってやっと実現できて、設営も福島大学の学生さんや二本松の皆さんが手作りで一生懸命作ってくれたりしたので、本当楽しかったです。」
 この絵は何を表現しているのでしょう?
「(これまで)何度か福島に来る機会があり、そこからすごく感じたものの断片みたいなものを最初抽象的に拾っていく感じだったんですけど、最終的にやっぱり、何て言うのかな、ちょうど昨日南相馬市に向かってく途中にある、オオカミの神社(注:飯舘村の山津見神社)の天井の絵から結構インスピレーション頂きまして…。(私は)狛犬っていうのをライフワークでやってきているので、やっぱりその土地その土地、今絶滅してしまったかもしれないですけど、日本中にニホンオオカミのいろいろな民話とか神話とか残ってますので、そういうのも探すのが好きで、それで昨日神社にお祈りしましたところ、そこからインスピレーション受けたオオカミの狛犬さん一対、両サイドにいまして、で、真ん中にはちょっと自分でもなんだかなんとも形容しがたいものが生まれてきたんですけど、なんか菊っぽいようなシャクナゲっぽいようなちょっと花っぽいような何かが出てきました。」


最後には、キャンバスの外に菊や河童の絵をすらすらっと描いた。
最後には、キャンバスの外に菊や河童の絵をすらすらっと描いた。
 事前にイメージは固めていないという話でしたが、いつこのイメージが浮かぶのでしょう?
「冒頭、キャンバスに向かってお辞儀してそこからちょっとマントラを唱えるんですけど、その時にぱーってやっぱり色々な、やっぱり何か一つのことに集中するというのは大切にしているんですけど、だから今この土地に対して集中した時にその昨日の行った経験の山が出て来たんですよね。あー、じゃあこれは描いたほうが良いと思って。だからやっぱりライブペイントするにはたくさんの経験であったり人との出会いが必要なので、そこの中の集約みたいなの、ばーって集まってくるものを掴んでいくって感じです。」
 そしてキャンバスから絵がはみ出し始めた時は、どうなるかと思いましたが…。
「最初は上にやっぱり安達太良山…が必要だなと思って、前回は結構阿武隈川からば~っと光が出ているような絵を描いていたので(注:一昨年智恵子の生家・智恵子記念館で描いた作品)、今度は最初に山を描きまして、そこから垂れるように何か絵の方に向かってくるっていう風にやりたいなって変わりました。」
インタビュー時の小松さん。白装束の絵の具がライブペイントの証だ。
インタビュー時の小松さん。白装束の絵の具がライブペイントの証だ。
 周りには河童も描いてありますが…。
「河童をすごく尊敬しているんですね。やっぱり河童描こう!と思って、このまま展示されるので、地元の方たちにもなんか親しみもってもらいたいなと思っていて、それでちょっと後半描きました。
 菊と、その上に描いたのは、これは『8』でもありますし、インフィニティマーク(無限『∞』)でもあり、無限に紡がれていきますようにっていう意味を込めてちょっと描きました。」
 ライブペイントに対する思いは、どういうものなのでしょう?
「やっぱりラブペイントっていうのは真実を伝えるものだと思っているんですね。嘘がない。皆さんの前でやるわけですから。やっぱりそこに来た人たちのエネルギーをそのまま吸収して、その人たちの真実の祈りみたいなものをぶつけていかなきゃいけないので、やっぱり芸術っていうのは真実があるかどうかって思っているので、嘘や迷いを持ってはいけないので、ライブペイントではスピード勝負でとりあえず手に取った絵の具は基本的に使うっていう。それが私の今の運命というか、だからこの色に合わせてこの色じゃなきゃってことで悩まない、今取ったものが真実っていう。なんか生き様みたいなのを共鳴してくださる方がいて、さっきもああやって(サイン会で)並んでくださった中で、たくさん共鳴していただいた意見とかも聞いて、それで自分の中でももっと成長しなきゃいけないこととかたくさんいっぱいまた受け取って、それをまたこうインプットしたものをアウトプットしてくみたいな。なんかループみたいなのって自分じゃ出来ない事で、人が集まったからこそ出来る事なので、そういった共同作業みたいなものを体感、一緒にしていかれたなと思ってやっています。」


今はライブペイントの横に、小松さんが着ていた白装束も展示してある。
今はライブペイントの横に、小松さんが着ていた白装束も展示してある。
 作品を仕上げた達成感なのか、プレッシャーからの解放感からなのか、絵を描く前よりも後の方が、小松さんの表情が晴れやかになったようにお見受けしました。
 小松さんはほかにも、美術館やギャラリーが東京の次に多い長野県出身で、休みの日は美術館などにお母さんと一緒によく行った事、小さい頃から「画家になるんだ」と言いながら絵を描いていた事、そのお母さんからは絵を「勉強しないで自由にやりなさい」とのびのび描かせてもらった事、オフには「ぐうたら」して、絵を描くのは「楽しく」て且つ「自分のセラピーみたい」なものである事等もお話し頂きました。
 こんなエピソードを踏まえて見ると、小松さんが二本松で生んだライブペイントの作品の世界に、また少し近づけた感じがしました。

絵の具も散らばったままだ。余韻とともに11月4日まで見られる。
絵の具も散らばったままだ。余韻とともに11月4日まで見られる。
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