謎多き古代エジプトを間近で感じられる貴重な機会！いわき市で開催中の「古代エジプト美術館展」8月20日まで

Chu! PRESS

2023.07.08

#古代エジプト美術館展

#いわき市立美術館

いわき市立美術館で6月24日から開催されている「古代エジプト美術館展」。

JRいわき駅から徒歩約15分

中継に訪れたのは、開催日の前日。大橋聡子アナウンサーを案内してくれたのは、所蔵品を集めた「古代エジプト美術館渋谷」のファウンダー、菊川匡（ただし）さんだ。

「古代エジプト美術館渋谷」は、日本唯一の古代エジプト専門美術館

古代エジプトとは、いまから約5000年前〜2000年前くらい、古代ローマ共和国に滅ぼされるまでの約3000年の歴史のことをいう。
ここには、2009年に東京にオープンした「古代エジプト美術館渋谷」のコレクションの中から、神々、ファラオ、生活、来世を象徴するものなど約200件を展示。館外で公開されるのは初めてのことだ。

先王朝時代からローマ支配時代までを網羅

入口付近に鎮座しているのは、2300年前に作られたフィラデルフォスの神殿の柱の基部。直径1mを超えるほどの大きな石だ。側面には、当時の王の名が刻まれている。

レプリカではなく、本物！

では、菊川さんが特に注目してほしいものを順に見ていこう。

まずは、「サソリ王のパレット」。「スコーピオン・キング」の名で知られるサソリ王が使っていた、化粧用のパレットだ。古代エジプト人は女性だけでなく男性も化粧をしていて、アイシャドウやラメをこのようなパレットの上ですりつぶして目の周りに塗っていたという。アイラインは、邪悪な力の侵入を防ぐ魔法の結界の役割を果たしていた。パレットには削った後もしっかり残っている。

当時のエジプト人もラメを使っていたとは…親近感！

そして、古代エジプトといえばミイラ。ほとんどすべての生き物が”神”だったため、ミイラは人に限ったものではない。展示されているネコのミイラは、音楽と愛の女神として知られるバステト神。また、多産の象徴の女神である魚のミイラ。特別な香料が使われているため、良い香りがするという。

時を超えて、表情が伝わってくる…！

メヒカリに似ている!?

スタジオにいるいわき市出身の小野紗由利アナウンサーには、市の魚「メヒカリ」に見えるよう…たしかに似ている。

「時空を超えた旅へ私酒井美紀がご案内いたします」と流れる

展示物について詳しく知りたい人は、音声ガイドの利用がおすすめ。今回の展覧会のために担当してくれたのは、古代エジプト好きとして知られる俳優の酒井美紀さんだ。”時空を超えた旅”が、より深く楽しくなること、間違いない。

”死んでも再生する”とされていた

次は、死生観が伝わってくるエリアへ。“来世がある”と信じていた古代エジプト人。来世で復活するためのものや、来世で必要なものが並べられている。

絵も文字も鮮やかではっきりと見える

お墓がとても大きく、副葬品も多かったのが特徴。お墓の中に一緒に収められていたものを中心に展示しているコーナーも。
そして…生き返りに対する強い思いが描かれているのが、こちらの「人型木棺」だ。

これだけ鮮やかに色味が残っているのも驚き

プトレマイオス朝時代の初期に作られた、長さ196cm、幅80cm、高さ50cmの大きな木棺。神聖な雰囲気が漂うこの中には、女性の貴族が入っていたという。びっしりと刻まれた絵と文字には意味があり、「死後、復活するまで魂が旅をする様子」が描かれている。

足元から顔に向かって、物語がある

足元に描かれているのは、お墓の入口。魂が旅をして行き着くのは、生前良いことをしたかどうかの審判を受ける場所だ。

右側に描かれる天秤、その真ん中に乗っているのが心臓

審判の際、死者が身の潔白を証明する「否定告白」をする。その時、真実の羽が左側に描かれている天秤に乗せられるのが心臓だ。その形をよく見ると、ハートマーク。現代に通ずるハートマークは、実は古代エジプト発祥だと菊川さんは話す。心臓が乗せられるのは、古代エジプト人は、考えるのは脳ではなくて心臓だと思っていたからだ。
「否定告白」がウソでなければ次のステップにいける。しかし、ウソをついていれば、左側の怪物に心臓を食べられてしまう、というシーンだ。

横たわる人の姿が見える

次のステップは、ミイラ作りのシーン。
そして、天空の女神であるヌトと太陽のシーンに続く。ヌトが太陽を飲み込むと夜になり、産み落とすと朝になる。その産み落とした太陽が糞転がしによって運ばれると…「地平線から太陽が昇る＝生き返る」そんな願いが描かれている。

金色に輝く顔には、理由がある

顔が表しているのは、太陽。古代エジプトのマスクに金が使われているのは、ここに理由がある。この蘇りを表す太陽神などの皮膚が、金でできていたと考えられていたからだ。この金にも、蘇りに対する深い思いが込められていたことがわかる。

木棺の下には、鏡が設置してある

また、この木棺の裏側にも神々が描かれていて、ここでは鏡写しでじっくりと見ることができる。

プトレマイオス朝時代のもの

この「人型木棺」の中に収められていたものが、同じく金色の「ミイラマスク」だ。ミイラは蘇りのための大切な身体であるため、包帯でぐるぐる巻きにしたミイラの上にこのようなマスクをまとわせた。「来世において、死者が聖なる者へと再生復活することを可能にするもの」といえる。ギプスのように麻布と石膏を使って形作り、その後に着色して金箔を貼る、張り子のようなものだ。