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徳光 雅英
徳光 雅英Masahide Tokumitsu
Road to TOKYO 2020 from Fukushima
 『ゴジてれChu!』では、去年から” Road to TOKYO 2020 from Fukushima”と題して、2020年の東京オリンピック・パラリンピック出場を目指す県内関連の選手を、定期的に紹介しています。
 初回は三春町出身で、現在は自衛隊体育学校所属、ウエイトリフティング男子69kg級の近内三孝(みつのり)選手を放送しました。だいぶ前の話ですが、私が取材した選手で、大変有望です。ぜひご紹介させてください。

 番組として最初に取材したのは、6年前の事。近内さんは当時、県立田村高校の3年生でした。
 中学時代はバスケットボール部に所属していましたが、同時に特設部の陸上選手としても活躍していた近内さんは、田村高校に入って陸上部の門を叩きます。田村高校陸上部は県内でも名門で、全国大会で活躍する選手を多く輩出しています。近内さんは優秀な選手が集まり、練習もハードな陸上部をやめ、どうしようかなと思っていた時に、高校にあった「ウエイトリフティング部」に興味を持ったと言います。
 「やってみたいという気持ちがありました。魅力は『階級制』というところ。身長やがたいが大きい人には負けるんで、そういうのが関係ない競技をやってみたかったんです。」
 168cmの近内さんはめきめき頭角を現し、全国高校総体で優勝するなど、順調に成績を伸ばしていきました。番組が6年前に取材したのは、全国を制した後の近内さんでした。

近内三孝選手。
近内三孝選手。
 あれから6年、近内さんは日本大学卒業直前の3月に行われた全日本学生選抜選手権大会で、クリーン&ジャーク180kg、スナッチとのトータル328kgの日本記録を樹立して優勝。その新聞記事を見て、私は一度取材してみたいなと思っていました。
 そこで去年5月に石川県金沢市で行われた全日本選手権大会に取材に伺いました。
 ウエイトリフティングの大会は初めて行ったのですが、階級ごとに競技が始まる前に選手の紹介があったり、音楽が大音響で流れたり、大画面に競技の様子が映し出されたりと、かなりショーアップされています。この大会はアジア競技大会や世界選手権の選考も兼ねているので、まさに真剣勝負が見られるはず、という事は、近内選手の日本記録更新にも期待が高まります。
 ウエイトリフティングは、頭上まで一気に挙げるスナッチと、鎖骨で一旦「ため」を作ってから頭上に挙げる「クリーン&ジャーク」の2種目があります。試技は3回ずつ、それぞれのベスト記録の合計重量「トータル」を争います。重量の軽い選手から挙げていくので、トップ争いする選手が何回目の試技で何kgに挑戦するか、また制限時間内なら重量変更も可能なので、その駆け引きも見どころです。
 スナッチでは、近内選手と宮本昌典選手(東京国際大学)がバチバチの戦いを見せます。
 近内選手が140kgを挙げれば、宮本選手は141kgを挙げ、近内選手が144kgに成功すれば、宮本選手が146kgを成功させ、3回目、近内選手が147kgを挙げに行きますが失敗。すると宮本選手はここまでの日本記録150kgを1kg上回る151kgに、一気にウエイトを上げてきます。そして…見事151kgを挙げ、近内選手の目の前でスナッチの日本記録を塗り替えてみせます。
 ここまでで近内選手と宮本選手の差は151-144=7kg。近内選手がトータルで勝つには、クリーン&ジャークで8kg上回らないとなりません。
 2人は1回目の試技でともに172kgを成功させると、宮本選手は177kgに挑戦します。しかし2回続けて挙げられず、トータル151+172=323kgが確定。近内選手は自身が出した日本記録と同じ180kg(つまり挙げれば7kg差を逆転して優勝)のウエイトにします。…が2回目、立ち上がる事すらできず、まさかの失敗。3回目、ラストの試技に全てをかけます。そして3回目、鎖骨までもっていくところには成功、息を幾つかついて、ジャークにもっていきます。何とか頭上に上がりますが、体の軸が少し回転し始めます。ウエイトリフティングは頭上に挙げた後、静止しなければなりません。ぷるぷる震えながら、何とかおさえる近内選手、審判のブザーがなり、見事成功。トータル324kg、自身の出した日本記録は上回りませんでしたが、クリーン&ジャークは10年ぶりに、そしてトータルではなんと20年ぶりに大会記録を塗り替え、初優勝を飾りました。
 直後のインタビューで近内選手は、
「本当は(クリーン&)ジャークとトータルで日本記録を狙っていたんですが、結果的に大会記録をとれたんですが、次の大会で日本記録を更新できるよう頑張ります」
と悔しさを滲ませました。


去年の全日本選手権の様子。
去年の全日本選手権の様子。
 と、ここまでは去年5月25日の全日本選手権当日での話。自衛隊体育学校で練習風景の取材に伺った6月27日、近内選手は練習の合間に本当の事を教えてくれました。
「本格的な練習が出来るようになったのは、ここ数日なんですよ。」
 実は全日本選手権のクリーン&ジャークの1回目、172kgを挙げた時にアクシデントが起きていたのです。
「なかなか(体の揺れが)止まらなかったじゃないですか、あれでちょっとダメージがきて、(3回目の試技で成功させた)180kgの時に(肩を)痛めちゃって…。こっちに来てから(20kgの)棒(=シャフトの事)も挙がらなかったんですよ。」
 それでも1回目の172kgを挙げたのは、「失敗すると2回目以降の試合を展開できなくなると思ったから」。いわば日本記録保持者の「意地」でもって成功させた試技だったのです。それでも「実は失敗すると思って、自分が一番どきどきしていた」と言います。


自分のペースでメニューをこなす近内選手…と、カメラマン。
自分のペースでメニューをこなす近内選手…と、カメラマン。
 自衛隊体育学校は、前の東京五輪の3年前1961年に設立され、東京五輪の金メダリスト三宅義信氏は偉大なOBです。
 近内さんが自衛体育学校を選んだ理由は「施設の良さ」、そして「食事の心配をしなくて済む」事だったと言います。例えば昼食は敷地内にある「専用食堂」で、それぞれの選手に必要な栄養素の食事を好きなだけ、1回で4000kカロリーまで摂る事が出来ます。また実際競技に専念できる環境があるだけでなく、指導者が7人と、選手数人に対して指導者が1人いる環境は、なかなか無いそうです。
 練習のメニューは決まっていますが、選手の年齢層の幅も広い事があり、何をどれだけするかは、選手1人1人違います。
「自分は短いっすよ、練習時間はだいぶ」
 近内さん、練習の合間に時々話しかけてくれます。
「自分は午前と午後合わせて(正味)3時間いかない位っすね。ぐだぐだやっても集中力が抜けるだけなんで…。」
 暫く話すと、それが小休止の終わったタイミングなのでしょう、すっと立ち上がって、自分のペースで練習に戻っていきます。スマホから好きな音楽を流し、黙々と必要なメニューをこなしていきます。音楽をかける事で雑音や雑念を排除して短時間に集中して練習するのが、近内流です。

 近内選手の良さを、堀越監督は「スピードが抜群にあるところと、ジャンプ力」と言います。
 それを証明するかのように、カメラの前で140cmの高さの所に、助走なしで飛び乗る様子を何度も見せてくれました。この跳躍力がある事で、重量を挙げる途中かかとだけでなくつま先も一瞬床から離れます。この間に体を浮かせ、重量の下に素早く潜り込む事で、エネルギーのロスを最小限に出来るのです。

 2020年の東京五輪に向け、近内選手にはまだ伸びしろがあると、堀越監督は言います。
「下半身の強化ですねあと体幹、幹を太くしてもうちょっと安定性が出てくれば、もっともっと良い形になると思う。スナッチ150kg位はすぐに、ジャークも185~190近くは可能ではないかと考えています」


音楽をかけながら、一人黙々と練習を積む。
音楽をかけながら、一人黙々と練習を積む。
 そして、近内選手自身に目標を色紙に書いて頂くと、そこには

「東京オリンピック、メダル獲得」

の文字が。
 「ずばり色は?」と尋ねると、近内選手「…目指すは金ですね」と笑いながら答えてくれました。「2019年の世界選手権で表彰台を狙えるくらいになれば、オリンピックで表彰台、金を狙えるかなって感じですね。」
 「自信の程は何%?」と伺うと、「表彰台に乗るのに80%位。」と明確に数字を出して答えてくれました。
 県民にメッセージをお願いすると、
「東京五輪、金メダル目指して頑張ります。福島県に明るいニュースを届けられるように頑張るので、応援、よろしくお願いいたします」
とカメラ目線で語ってくれました。


 と、ここまでが去年の取材こぼれ話です。その後、アジア大会では69kg級10位、国体ではあえて77kg級でエントリーして5位(トータル306kgは、69kg級なら優勝だった)、世界選手権では67kg級で13位でした。
 階級分けも変わって69kg級が無くなり、67kg級となります(東京五輪実施階級です)。69kgから更に2kg絞るのも大変だと思います。でもその困難も、近内さんの超人的な跳躍力よろしく、乗り越えてくれる事でしょう。今後の活躍を、福島県から祈念しています。

記念写真。恐らく近内選手は67kg級で東京五輪を狙うはずだ。
記念写真。恐らく近内選手は67kg級で東京五輪を狙うはずだ。
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