2003.03.05
福島東高校サッカー部、ベスト8への道1
日記のコーナーは実に4か月半ぶりです。年末年始はスポーツの取材や中継、風邪に加えて2月は冬の尾瀬の取材などで、だいぶさぼっていました。(ズームイン!!SUPERのページは若干更新しましたよ!←言い訳)
皆さんご存知でしょうか?現在発売中の『サッカークリニック』4月号に、県立福島東高校サッカー部が7ページにわたって特集されています。高校サッカー&福島東高校ファンは必読です(但し書店に置いてある部数は決して多くないので、お急ぎを)。気が早いのですが、年末によく発表される「今年の県内十大ニュース」に恐らく、福島東高校サッカー部 全国高校選手権ベスト8が入るでしょう。選手権ベスト8は福島県勢過去最高成績タイ、福島県勢初の3連勝、しかも4試合毎試合得点、その上、PK戦で敗れた為に準決勝進出を逃したものの、80分間では2勝2分けと負けが無いのです。今回、私はその福島東高校が準々決勝で惜敗するまで間近でチームを取材させていただく機会に恵まれました。今回はこの日記のコーナーをお借りして、数回にわたって「徳光が見た、福島東ベスト8の足跡」を記しておきたいと思います。
福島東高校は県北部の進学校。夏休みは課外活動などがあって、サッカー部は遠征が出来ません。「恐らく全国高校選手権に出るチームの中でも、夏に遠征しないのはうちくらいのものでしょう。」と齊藤勝監督は話していました。
福島東高校は、この1年で大きく変わりました。特に県代表になってからの変わり方は、大変大きかった。全国レベルの高校と試合をしていくごとに成長していったのです。その第一歩を踏み出した試合が、県大会後初めての練習試合、盛岡商業戦でした。ダイレクトのパスワークが巧いサッカーに、前半は何とか凌いで1失点。エース萬代宏樹選手(2年)と丹野友貴選手(3年)の2トップの得点で、2−1とリードして終了します。しかしハーフタイムの齊藤監督は、怒っていました。
「何故、ゲーム形式の練習の時にもわざわざプレーを止めて指導してきたか、これで理由が分かっただろ。県内で通用した事なんか、全国で通用しないんだよ。俺が何度となく『蹴りたい位置にきちんとボールをトラップしするんだぞ』、『きちんと周りを見ておくんだぞ』、って言ってきた理由が分かるだろ?
ボールをとってパスを出そうとしても、パスがつながらない。どうしてだ?判断が遅いからだろ。どうして判断が遅いんだ?ボールをもらう前に、周りを見ていないからだろ。ボールが来た、それから周りを見ても遅いんだよ。だからパスコースがなくなっちゃう。
相手はどうだ?ちゃんとパスを回しているじゃないか。どうしてパスが回せる?判断が早いからだろ。パスをもらう前に周りを見て、パスをもらう時点で次に何をすべきかのイメージがあるから、パスが回せるんだよ。
トラップがちょっと長くなっちゃった、それでも県内ではキープしてパスが出せたよ。盛岡商業相手にどうだ?ボールをとられちゃうだろ?全国レベルのプレスの前に、ちょっとしたミスをしたら、自分のボールに出来ないんだよ。だから普段から一つ一つのプレーを丁寧に、正確にするように口を酸っぱくして言ってきたんだ。全国はそんなに甘くないんだって!…」
基本的な事がきちんと出来るという前提が無いと、全国大会は絶対に勝ち抜けないんだ。全国大会をなめるな!そんな強烈なメッセージを矢継ぎ早に畳み掛けて、ハーフタイムは終わってしまいました。
後半、福島東イレブンのプレーは、どことなくぎこちなくなりました。「代表にはなったけど、あと1か月足らずでどれだけ出来るようになるのか?」「全国大会に出るチームとはそんなにレベルの差があるのか…。」そんな自問自答をしながらの不安げなプレーに見えました。タッチ数の少ない速いパスワークで、盛岡商業は再三福島東のディフェンスラインを崩し、後半だけで4回ゴールを割ります。対する福島東は後半無得点。
2−5
福島東イレブンはうなだれて帰ってきました。
「県内ではゴールの前で凌げても、全国レベルでは守れない事がはっきりしました。」
齊藤監督はきっぱり、でもそんな事は分かっていた事という口調で話されました。監督の心の内は「選手には良い薬になったはず。選手たちが、目指すべき方向やレベルを骨身にしみて実感できた事が収穫なんだ。」という感じにお見受けしました。
「ただ高校生は吸収も早いので、修正していって(全国大会で)結果を残せるようにがんばりたいと思います。」
と、選手の可能性に対する厚い信頼も伝わりました。しかし私は正直なところ「あと1か月を切っているのに大丈夫なのか?」と半信半疑でいました。インタビュー後しばらくして別の記者の質問に「まだ諦めた訳じゃないですから…。」なんて答える声も聞こえました。
長澤恂平キャプテン(3年)にインタビューをしても、その時は消え入りそうな声で「もう自分たちが何も出来なかったというのが正直な気持ちです。この辺でもう一回、自分たちを締めなおすという意味では良かったと思います。」と話すのがやっとの状態でした。
県内では先制点を許さず、常に安定していた福島東ディフェンスも、盛岡商業のダイレクトのパス回しでずたずたにされました。しかしこの惨敗から、福島東の「変化」が始まるのです。(つづく)
皆さんご存知でしょうか?現在発売中の『サッカークリニック』4月号に、県立福島東高校サッカー部が7ページにわたって特集されています。高校サッカー&福島東高校ファンは必読です(但し書店に置いてある部数は決して多くないので、お急ぎを)。気が早いのですが、年末によく発表される「今年の県内十大ニュース」に恐らく、福島東高校サッカー部 全国高校選手権ベスト8が入るでしょう。選手権ベスト8は福島県勢過去最高成績タイ、福島県勢初の3連勝、しかも4試合毎試合得点、その上、PK戦で敗れた為に準決勝進出を逃したものの、80分間では2勝2分けと負けが無いのです。今回、私はその福島東高校が準々決勝で惜敗するまで間近でチームを取材させていただく機会に恵まれました。今回はこの日記のコーナーをお借りして、数回にわたって「徳光が見た、福島東ベスト8の足跡」を記しておきたいと思います。
福島東高校は県北部の進学校。夏休みは課外活動などがあって、サッカー部は遠征が出来ません。「恐らく全国高校選手権に出るチームの中でも、夏に遠征しないのはうちくらいのものでしょう。」と齊藤勝監督は話していました。
福島東高校は、この1年で大きく変わりました。特に県代表になってからの変わり方は、大変大きかった。全国レベルの高校と試合をしていくごとに成長していったのです。その第一歩を踏み出した試合が、県大会後初めての練習試合、盛岡商業戦でした。ダイレクトのパスワークが巧いサッカーに、前半は何とか凌いで1失点。エース萬代宏樹選手(2年)と丹野友貴選手(3年)の2トップの得点で、2−1とリードして終了します。しかしハーフタイムの齊藤監督は、怒っていました。
「何故、ゲーム形式の練習の時にもわざわざプレーを止めて指導してきたか、これで理由が分かっただろ。県内で通用した事なんか、全国で通用しないんだよ。俺が何度となく『蹴りたい位置にきちんとボールをトラップしするんだぞ』、『きちんと周りを見ておくんだぞ』、って言ってきた理由が分かるだろ?
ボールをとってパスを出そうとしても、パスがつながらない。どうしてだ?判断が遅いからだろ。どうして判断が遅いんだ?ボールをもらう前に、周りを見ていないからだろ。ボールが来た、それから周りを見ても遅いんだよ。だからパスコースがなくなっちゃう。
相手はどうだ?ちゃんとパスを回しているじゃないか。どうしてパスが回せる?判断が早いからだろ。パスをもらう前に周りを見て、パスをもらう時点で次に何をすべきかのイメージがあるから、パスが回せるんだよ。
トラップがちょっと長くなっちゃった、それでも県内ではキープしてパスが出せたよ。盛岡商業相手にどうだ?ボールをとられちゃうだろ?全国レベルのプレスの前に、ちょっとしたミスをしたら、自分のボールに出来ないんだよ。だから普段から一つ一つのプレーを丁寧に、正確にするように口を酸っぱくして言ってきたんだ。全国はそんなに甘くないんだって!…」
基本的な事がきちんと出来るという前提が無いと、全国大会は絶対に勝ち抜けないんだ。全国大会をなめるな!そんな強烈なメッセージを矢継ぎ早に畳み掛けて、ハーフタイムは終わってしまいました。
後半、福島東イレブンのプレーは、どことなくぎこちなくなりました。「代表にはなったけど、あと1か月足らずでどれだけ出来るようになるのか?」「全国大会に出るチームとはそんなにレベルの差があるのか…。」そんな自問自答をしながらの不安げなプレーに見えました。タッチ数の少ない速いパスワークで、盛岡商業は再三福島東のディフェンスラインを崩し、後半だけで4回ゴールを割ります。対する福島東は後半無得点。
2−5
福島東イレブンはうなだれて帰ってきました。
「県内ではゴールの前で凌げても、全国レベルでは守れない事がはっきりしました。」
齊藤監督はきっぱり、でもそんな事は分かっていた事という口調で話されました。監督の心の内は「選手には良い薬になったはず。選手たちが、目指すべき方向やレベルを骨身にしみて実感できた事が収穫なんだ。」という感じにお見受けしました。
「ただ高校生は吸収も早いので、修正していって(全国大会で)結果を残せるようにがんばりたいと思います。」
と、選手の可能性に対する厚い信頼も伝わりました。しかし私は正直なところ「あと1か月を切っているのに大丈夫なのか?」と半信半疑でいました。インタビュー後しばらくして別の記者の質問に「まだ諦めた訳じゃないですから…。」なんて答える声も聞こえました。
長澤恂平キャプテン(3年)にインタビューをしても、その時は消え入りそうな声で「もう自分たちが何も出来なかったというのが正直な気持ちです。この辺でもう一回、自分たちを締めなおすという意味では良かったと思います。」と話すのがやっとの状態でした。
県内では先制点を許さず、常に安定していた福島東ディフェンスも、盛岡商業のダイレクトのパス回しでずたずたにされました。しかしこの惨敗から、福島東の「変化」が始まるのです。(つづく)
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