2005.09.21
秋に残る夏
朝晩すっかり涼しくなってきた。
寝る前にうっかり窓ガラスを閉め忘れると、
肩が冷えて目が覚めてしまう。
私は夏が好きだ。
夏には、あのムッとした湿度で草いきれの香りが濃くなる。
それを胸に思い切り吸い込むと、
緑に元気をもらったような、「生きてる」感じがする。
ついこの間、天気のコメントを考えようと、
外に出て、五感を働かせていた時のこと。
秋の虫の音に混じって、一匹のセミの声が聞こえてきた。
リーンリーン、フィーフィーという大合唱の中、
ジジジジジという声はあまりにも頼りない。
出てくる時期を間違えてしまったのか。
今から相手を見つけることはできるのだろうか。
もうすぐ秋分。
この声に応えてくれる仲間はもういないだろう。
季節の移り変わりというどうしようもない自然の摂理の中で、
ただ一匹抵抗していたセミ。
このセミは「私はまだ、います」と訴えている「夏」なのではないか
そんなことを思ったら、なんだか切なくなった。
こんな感傷的な気持ちになるのも、きっと秋のせいだ。
深まり始めた秋、でも、まだ夏は残っている。
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