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徳光 雅英
徳光 雅英Masahide Tokumitsu
Mucha moves us (and a notice on Chu Tube)
 いま郡山市立美術館では、「みんなのミュシャ ミュシャからマンガへ―線の魔術」が開かれています。ミュシャ(1860~1939)は、チェコの画家。挿絵を描きながら腕を磨き、たまたまフランスの女優サラ・ベルナールの芝居のポスターの依頼があり、リトグラフ(石版画)でベルナールを描いたポスターがきっかけで一躍有名に(その出来栄えに、ベルナールは涙を流したとか)。その後ベルナールの次作以降のポスターやたばこ・酒類のポスター等で一世を風靡したのです。
 今回は、敬虔なクリスチャンの母親に育てられたミュシャが8歳の時に描いたキリスト像から始まり、ミュシャが目にした日本や中国などの”輸入美術“、挿絵画家としての習作や出版物、その名を馳せた『ジスモンダ』(一躍有名になったポスターの”現物“ですね)から、その後に及ぼした影響(特に海外のミュージシャンのアルバムデザインや、日本の漫画へ。これがまた影響が大きいんです!)を実際の作品・描写で以て、丹念に探った意欲的企画展です。

 
 なぜそこまで見て来たかのように言えるのかと言うと、実はきのう、風が強い中、観に行ってまいりました。
 一言で言うなら、(ミュシャには失礼な言い方かも知れませんが)巧い、繊細、美しい!特に女性の美しさ(視線がまた好いのですよ)、デザイン性、色遣いや曲線の見事さ、何よりデッサン力の凄さ、それらが合わさる事で生まれる作品の圧倒的な力!(それにしてもベルナールのポスターがあんなに大きいとは!!)

 それでは幾つかの、私なりの見所を挙げてみたいと思います。

1)絵力を支える「デッサン力」

 挿絵画家として研鑽を積んだミュシャは、そのデッサン力が半端ではありません。実際にミュシャが手に入れていたアジアの美術品の更に先に、習作を含め展示されています。細い線だけで描き出す写実性(描写そのものと、陰影の濃淡)、そして描くべきものに対する配置のデザイン力が感じられます。特に明るく光が当たっている所等は原画の段階で白く塗る事で、印刷する際に白さ・明るさを強調すべき部分として「指示」を出す意味もあったようです。
 そして学芸員の方に教わったのは、
「ここ通り過ぎちゃうんですけど、これなんか凄いですよね。」
と言われた作品(確か、『ル・モワ』誌の表紙)。『ジスモンダ』に向かう手前、デッサン群がある左手に掲げられているのですが、中央の円の中に描かれた女性の写実性に対して、その周囲に施されたデザインの緻密さ。今だと女性の写真を中央に配して、周囲をパソコンでグラフィック化した感じに、手描きに基づいたリトグラフでやってしまうこの構成力!!皆さんも、ここをサラッと見て通り過ぎずに、じっくりご堪能を。

2)一躍ミュシャを有名にしたポスターの「迫力」と「アート性」~ぎりぎりまで近づくべし!~

 絵画は、図録やチラシなどだと、どうしても大きさや筆致は分かりません(例えば『モナ・リザ』の実物を見ると、絵の素晴らしさとは別に、期待していたほど大きくはなく、一人勝手に若干がっかりしたなんて事が私にはありました)。しかしこの『ジズモンダ』の何と圧倒的な、主役ベルナールの存在感(確か等身大で描かれているそうです)。その立ち姿の美しさは、曲線美を得意とするミュシャをして、ベルナールの一本芯の通ったところを想起させるかのようにポスターの中心を縦に真っ直ぐ貫きます。
 学芸員の方は
「近づいて下から見上げると一層はっきりするのですが、タイトルの所等には金色を使っていて、きらきら輝く感じは当時から目立ったと思います。」
とのご指摘。確かに、今でもその光沢がはっきり感じられます。
 この展示会、勿論展示物に触れる事は出来ませんが、ぎりぎりまで顔を近づけるのはOK。というのも、こういった光沢をはじめ、ミュシャのデザインや描写の細かさの素晴らしさは、作品に近づかないと分かりません(そして近づくと、陰影を色ではなく、線の数の多さで出しているのも分かります。こんなところも後の漫画に影響を与えたのでしょうか)。作品の前に立ち入り禁止エリアはありません。出来るだけ近づいて、その迫力と、迫力を支える緻密さを見るべし!

3)女性の艶やかさ ~視線と衣装とポーズと…~

 ミュシャの描く女性は、とても魅力的。横顔もあれば、正面を向いたもの、また目を閉じがちのもの…どれも変化に富んでいます。皆さんはどのタイプの女性像がお好みでしょう?私は見下ろす感じの女性像が、たまらなく好きです。こちらに「何か用?」とでも言いたげな、己の強さと美への自信に満ちたようにも思わせるあの視線…どきっとさせられます。
 因みにポスターとして描かれたものの中には、視線を辿っていくと、その先にタイトル文字や商品に目が行くようになっているものも…。そんな視線の誘導に、「あ、やられた!」と思うのも、ミュシャの作品を観る楽しみの一つです。
 またポーズも魅惑的。例えば『連作〈四つの宝石〉』等は、ルビーやエメラルドといった宝石からイメージを膨らませた作品ですが、4作品全て並ぶ事で、またそれぞれの姿勢も含めて作品の魅力の違いが浮き彫りになります。学芸員の方曰く、
「2つや4つの連作があるんですが、これらは日本の屏風絵等から、対や組で鑑賞する楽しみ方の影響をうけているのではないかと思います。」
 なるほど、納得です。
 そして、手の位置一つとってもまた惹かれるポイントの一つ。
「『モナコ・モンテカルロ』(鉄道のポスター。と言っても一瞬見ただけでは鉄道のポスターには見えませんが)もそうですけど、女性の手が、すごく魅力的に描かれていて、この描写も後の漫画の描き方に通じるところがあると思います。」
 確かに。指の形や長さ、開き具合等、計算されているのでしょうね。
 また描かれる女性の衣装も、露出の少ないものから、肩が見えるもの、背中までばっくり割れているものまで、作品によって様々。
「ミュシャは実際、自ら衣装そのもののデザインもしたそうです。」
 衣装を彩る装飾のデザイン性と、一つ一つの細かさも見事。これらも含めて、出来るだけ近づいて見るべし!

4)デザイン化された文字

 ミュシャの影響は、例えば教科書などで見る与謝野晶子の『みだれ髪』(表紙デザイン 藤島武二)等にも影響を与えます。そして雑誌『明星』や『文章世界』等の表紙を見ていると、今の雑誌のようにタイトルのロゴが決まっておらず、絵に合わせて毎回雑誌名の字体(というかデザイン)が変わっているのが分かります。これは雑誌名や書名もまた、表紙のデザイン画の一部だからでしょう。
 これはミュシャのポスターや表紙絵等にも既に見られるもので、一枚の絵ながらタイトルと、出演者と、劇場名が全て字体が違う、それでいて全体としてしっくりくる、字と絵が独立していない融合性を感じます。そんな一体感も含めて、ミュシャの視点・考え方をも、後の表現に影響を与えている事を、展示を追いかけていく内に感じられる筈です。

 …とまぁ、色々感じた事を取りとめもなく綴ってみましたが、まだ書き足りません。やはり“本物”は我々見る者の五感を大いに刺激し、心を揺さぶってきます。全国を何か所か巡って来た展示会だそうですが、今回はここ郡山が最後の巡回地だそう。また今回の展示を見ていると、所謂ミュシャの年表等はなく、作品と展示の流れを通して、ミュシャの凄さと影響力の大きさを感じ取れる内容となっています。3月7日まで行われているとの事なので、一度足を運ばれる事をお勧めします。私は正直、期待値以上で大満足でした。


 そして突然ですが、お知らせです(実はここが一番大事!?)。今夜7時半から、皆さんにお年玉プレゼントを兼ねた、「みんなのミュシャ」に関する配信を行います。緩~いような、白熱するような!?どうなる事やら…是非ご覧ください。
「みんなのミュシャ」を観に行った。じっくり観るなら最低1時間は欲しいところだ。
「みんなのミュシャ」を観に行った。じっくり観るなら最低1時間は欲しいところだ。
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