福島の小さな町が変わった!過疎の町に1日2000人が訪れる「駅前マーケット」

Chu! PRESS

2025.05.30

福島県南部、石川郡に位置する浅川町は、県内で最も人口規模が小さい町の一つです。2020年の国勢調査によると、人口は約5,800人で、そのうち65歳以上が約40％を占めるなど、少子高齢化が深刻です。民間の有識者が集まる「人口戦略会議」の分析によると、浅川町は2020年から50年の間に若年女性の人口が50％以上減少する「消滅可能性自治体」に指定されています。

町では子育て支援や移住促進に取り組んでいますが、若年層の都市部への流出が進み、出生数は年間30人前後と低水準で、人口減少に歯止めがかかっていません。

■ふるさとにUターンした芳賀さんの挑戦

【写真】浅川町地域おこし協力隊／芳賀幹雄さん

浅川町地域おこし協力隊として活動している芳賀幹雄さん（68）は、高校まで浅川町で過ごし、その後大学進学のため上京。東京で就職し、仕事が一区切りした後、磐城浅川駅前で商売をしている兄の手伝いをしながら、約50年ぶりに故郷へUターンしました。2024年1月から地域おこし協力隊として活動を開始。
久しぶりに帰郷した芳賀さんが感じたのは、駅前通りの静けさでした。JR水郡線の磐城浅川駅は町内の主要駅ですが、利用者は主に通学の学生で、朝晩を除けば通行人はまばら。駅前通りには空き家も目立ち、町の景観や防犯面での不安もあります。「久しぶりに町に戻ったら、あまりにも何もなくて、寂しく感じました」と芳賀さんは話します。

■「ふるさとを活気づけたい」定期的なイベントで町に人を呼び込む

そこで、芳賀さんは駅前の活性化を目指し、磐城浅川駅の利用促進や駅前の賑わい創出に取り組みました。2024年7月に「浅川駅前マーケット」を開催し、町内のハンドメイド作家や周辺自治体からの出店者を集めたマルシェを企画。第1回目には約1千人が駅前に集まり、好評を博しました。

その後、10月と12月にも開催され、特に12月には「クリスマスマーケット」として、雑貨や飲食店の出店に加えて、クリスマスコンサートで町に賑わいをもたらしました。さらに、8000個の電球を使ったイルミネーションが点灯し、駅舎や周辺を華やかに演出。冬の暗さが寂しさを増す中で、住民から「来年も続けてほしい」との声が多数寄せられ、設置期間は1か月延長されました。

【写真】クリスマスマーケット（浅川町地域おこし協力隊・芳賀さん撮影）

■空き家の活用で新たな価値を創出

町恒例のイベントとして定着しつつある「浅川駅前マーケット」。2025年5月には第4回を開催し、駅前通りを歩行者天国にして範囲を広げ、雑貨や古着、地元グルメなど、出店者は約4倍の45店舗に増え、町に賑わいをもたらしました。約2,000人が訪れ、その中には「サイクルトレイン」を利用して自転車で来た人もいました。

【写真】空き家でJAZZコンサートを開催

また、芳賀さんは空き家問題にも取り組んでおり、空き家の新しい使い方を提案する一環として、空き家でジャズバンドの演奏会を実施しました。がらんとした部屋に響く音楽は、空き家に新たな息吹を吹き込み、地域住民に空き家の活用可能性を示しました。

■にぎわいを未来へつなぐために

2025年2月には、磐城浅川駅と国道118号をつなぐ新しい通りが開通し、町の交流人口の増加が期待されています。芳賀さんは2025年8月31日（日）と11月30日（日）にも「浅川駅前マーケット」を開催する予定で、準備を進めています。「浅川町をもっと多くの人に知ってもらい、訪れてほしい」と語る芳賀さんの挑戦は、今後も続いていきます。

Chu!PRESS編集部