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2022.06.01

経営は男性がするもの?大ヒット商品を生み出した“跡取り娘”の葛藤と大逆転~「女性だから」は自分を縛る鎖じゃない!~

経営は男性がするもの?大ヒット商品を生み出した“跡取り娘”の葛藤と大逆転~「女性だから」は自分を縛る鎖じゃない!~
日本はいま、様々な困難と直面しています。私の住む福島を襲った東日本大震災、その後に相次いだ大水害、そして、コロナウイルスの蔓延…。さらに不安定な国際情勢の中で様々な物価が高騰し生活や生業を脅かしつつあります。
そうした中で、女性ならではの視点で新しい時代を切り拓く女性経営者の存在が注目をあつめています。民間の調査会社が行った全国調査では、日本の経営者に占める“女性社長”の割合は8.1%に上り、1990年の調査開始以来、過去最高を記録したことが分かりました。政府が「女性活躍」を成長戦略に掲げて様々な施策を行った結果とも言えますが、周囲を見回すと社会が女性に求める立ち位置はいまだ古くからの固定観念に囚われ、女性の力を社会に生かしきれていないことも多くあると感じています。
私自身は夫とともに小中学生を対象とした学習塾を経営しています。義理の父から受け継いだ個人塾で、子どもたちと対面で行う昔ながらの学びの方法を継承しながらも、女性の視点を経営にも取り入れようと試行錯誤を繰り返しています。

共働きで送り迎えができないといった親たちの声に応えるためにzoomで行う「オンライン授業」を提案したり、コロナ感染の不安を取り除き自宅でも授業が受けられる「YouTube配信」を企画したり、また、塾の情報をWEBサイトやSNSで発信したりと、塾経営を安定化させるための様々な提案をしてきました。

しかし、何か新しいことをしようとすると「経営は男性がするもの」といった考えなのか「嫁だから」という理由なのか、意見を聞き入れてもらえない事もしばしば。決定権を任されているはずの教材選定の場面でも補助的な役割として扱われ悔しい思いをしました。家業を支えるのは長男の役割で嫁は添え物…という周りの意識が透けて見える現実と向き合いながらも、この厳しい時代に生き残れるのかという危機感を抱え、女性としてどう動くのが正解なのか模索する日々を過ごしていました。

そうした葛藤の中、福島県いわき市にある老舗魚屋の跡取り娘として奮闘している女性がいることを知りました。

株式会社サスイチ小野水産代表取締役の小野嘉子さん(50)。巨大津波で失った店舗を再建中にコロナショックに襲われ従業員を全員解雇…。彼女は廃業の危機に乗り切るために、女性ならではの感性を生かした魚屋の新しいスタイルを見出し、家業を守り続けています。彼女の姿を見て「私も頑張ろう!」と何度も勇気をもらっていますが、この困難な時代を「女性として」「家業と向き合う」をテーマに、読者のみなさまにも紹介させていただきます。

【執筆者 佐藤宏美 (福島県郡山市在住)】
1981年生まれ。未就学児・小学生の2人の子どもを育てながら夫の実家の家業でもある個人塾の講師としても働いている。フルリモートで株式会社ケイリーパートナーズの業務に参加しパラレルワークを実践中。

 

■大震災と新型コロナによる2度の挫折を経験した女性経営者の思い

小野さんが経営する魚屋「さすいち」は昭和19年創業、70年余り続く老舗で、福島県いわき市の小名浜漁港のすぐそばにあります。東日本大震災前は一階で鮮魚や加工品を販売し二階はレストランという、港町の中でも目立つ大きな店舗を経営していました。

小野さんは30歳のときに跡継ぎ娘として飲食部門を任され、「お客様にお出しするものは必ず良いものでなければならない」という父の教えを受けながら、当時30人を超える従業員をまとめながら経営に携わっていました。様々な苦労がある中でも経営者としての経験を重ね、店舗経営も順調にいっていた最中に東日本大震災が起きました。

「一階の天井まで水が上がったんです」
朗らかで明るい印象の小野さんですが、2011年に起こった震災当時の壮絶な話をするときは声のトーンが少し重くなりました。店舗一階部分の魚屋はほぼ全壊。二階のレストランにつながる階段も大きな被害を受け危機的な状況に陥りました。
当時、社長を務めていた小野さんの父は「お金をかけても店を再建したい。魚屋は続けるんだ!」と、多大な費用をつぎ込んで店舗を再建すること主張したといいます。しかし、小野さんは、原発事故以降の風評被害でどれだけ客足が戻ってきてくれるか不透明なことや震災前から感じていた若者の「魚離れ」などの理由から、元の様な大きな店舗への再建に使うことに反対し、意見が対立したといいます。

「規模は小さくとも、お客様にいいものを提供できる店舗にしたい」
毎日、壊れた店舗を片付けながら模索した小野さん。跡継ぎ娘として譲れなかったのは「自分の手の届く範囲の商売がしたい」という思いでした。
当時を振り返り小野さんはこう話します。
「厳しい意見も沢山もらいました。女だから魚の良し悪しは分からないだろうとか、男じゃなきゃ魚屋に必要な力仕事もまともにできないんじゃないかとか。そういった声の中でも『自分が楽しい』と思った仕事をし続けていきたいなと感じたんです」

小野さんは、話し合いの末、震災を機に父から社長の代を受け継ぎ、規模を小さくした魚屋とレストランを併設した新店舗をオープンさせました。そして、風評被害に立ち向かいながら家業を継続させるために力を注いでいきました。しかし、そこに今度は新型コロナウイルスという困難が降りかかります。原発事故後元気がなかった小名浜に徐々に活気が戻りつつあった矢先に客足がストップし、レストランの仕入れ代や人件費で赤字は増えていきます。そして、コロナ禍の2020年夏、再建したレストランは休業に追い込まれ、多数いた従業員は全員解雇したそうです。

「従業員たちを店の経営問題に巻き込めないと考え、苦渋の決断でした」
そう寂しそうに話す小野さんの顔を見て、私の中にもコロナ禍での個人塾経営の苦しさが蘇り、涙が出てしまいました。
 

■逆境からの大逆転!“女性ならではの目線”が生んだヒット商品開発とは?

家業の経営が再び危機に陥ったとき、小野さんは“女性ならではの目線”を商品開発に取り入れることを思いつきました。

現在、魚屋「さすいち」のECサイトで扱われている『湯煎にかける』シリーズです。

「お魚は食べたいけど、さばいたりする調理が面倒」といった馴染み客たちの声や「わざわざ魚屋まで買い物にいくのは不便」といった地域の人たちの声を聞き、日々の些細なことがネックになっているならそこを解消しようと、昼夜問わずに試行錯誤を重ねて約3か月。湯煎にかけるだけで、お店で出していたままのお魚料理が味わえる『湯煎にかける』シリーズを完成させました。
販売当初から地元で話題の商品となっただけでなく、ECサイトで販売を始めると意外な客層からの反響が大きかったそうです。それは、働く女性たちや子育て真っ最中のお母さんたちからの喜びの声がたくさん届いたのです。

私もそうですが、働きながら料理もこなしていく女性にとってスーパーで売っている生魚は、それが新鮮なものや旬なものであってもなかなか手が伸びないときがあります。捌いて料理するのに時間がかかるだけでなく、魚の扱い自体が苦手な女性も多いかもしれません。また、「骨があるからいやだ」などの理由で子どもにも不人気。そうした中で、『湯煎にかける』シリーズは、グリルやコンロを使わずにお湯を間接的にかけるという工程だけで、しっかりと調理加工された煮魚や焼き魚が食卓にだせるという魔法のような商品だったんです。その手軽さから家庭での魚の消費を増やすことにもつながり、若者世代の「魚離れ」を食い止めることにも期待できるものでした。

コロナ禍で経営転換を余儀なくされ、レストランは未だに休業中、従業員もわずか2人という体制で人気シリーズとなった商品の生産も決して多くはありませんが、「この規模が自分の手の届く範囲でちょうどいい」と小野さんは話します。

魚屋「さすいち」のECサイトを開くと、ひと際目立つキャッチコピーがあります。

それは、“品揃えの少ない魚屋”という言葉。

そこには、大きな魚屋を再建したいという先代の社長と意見が対立しながらも、「お客様にお出しするものは必ず良いものでなければならない」という教えを守り、自分なりの意志を貫こうとする跡取り娘の思いが込められていると感じました。
 

■「女性だから」を言い訳ではなく“武器”に

今回、老舗魚屋という家業を継ぐ小野さんを取材する中で、私の中にあった「〇〇だから」という言葉が自分自身の思考も行動も縛り付けていたのではないかと気づきました。

「女性だから」「娘だから」「嫁だから」「家業だから」…。
そんな縛りを無意識のうちに自分の中に作ってしまい、身動きが取れなくなってしまっていたのかもしれません。

小野さんは「女性だから」働く女性の身になって商品を開発できた。「跡継ぎだから」様々な人と触れ合えた。小野さんにとって「〇〇だから」というこだわりは、自分を縛る鎖ではなく、様々な道を切り拓く道しるべになっているのだと感じました。

「だから」という言葉を「だからこそ」に変えることが出来れば、どんなに困難な状況に陥っても前に進むことができる。取材の中で朗らかに笑う小野さんの笑顔を見て、私はそう強く感じることが出来ました。


※この記事はケイリーパートナーズと福島中央テレビの共同連携企画です。
福島中央テレビでは、テレビ番組やイベント、web サイトで福島県内で活躍する働く女性の姿や声を発信する女性活躍推進を目指すキャンペーン【MyLife〜はたらくで、かがやく〜】を展開中です。

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