2024.11.16
103rd high school soccer tournament in Fukushima
きょう、冬の国立競技場を目指す全国高校サッカー選手権福島県大会の決勝が行われた。
決勝
尚志1-0学法石川
(尚志は4年連続15回目の選手権出場)
試合は立ち上がり、いきなり尚志がチャンスを掴む。荒川竜之介選手が中央へ上げたボールを、西丸由都選手が胸トラップでディフェンスラインの後ろに落とし、長坂隼汰選手がシュートを狙うも、長坂選手のポジションがオフサイド。ただ長坂選手がシュート前1回触ったかどうか、それ以外は全部ワンタッチ(ノートラップ)プレーで正確につなぐ精度の高さを見せつける。
更には左からのクロスボールを学法石川の吉田遥登選手がクリアしたところで、大内完介選手がやはりノートラップでシュート。枠を捉えられなかったが、鋭いシュートを放っていく。
一方学法石川もここまで3試合無失点の堅守ぶりを発揮し、0対0で前半を折り返した。
そして後半、学法石川は中盤からの縦パスを、相手ディフェンダーを背負った鳥居樹生選手が受けると、反転して右サイドをドリブルで上がり、後ろから上がってきた板倉紘誠選手へパス、その板倉選手がドリブルで上がろうとするところを後ろから尚志が体を当てて倒すファウルで、学法石川が同点のチャンスを迎える。ペナルティエリアのやや外、ゴールまで右45度の角度という絶好の位置からのフリーキックだったが、フリーキックが予想以上に伸びてそのままゴールラインを割ってしまい、惜しいチャンスを逸する。
対して尚志は左サイドで長坂選手が、2人がかりでボールを奪いに来るところをキープし、中央へドリブル突破を図る。だが学法石川もしつこい守りで自由にさせないでいると、長坂選手が星慶次郎選手にボールを下げ、星選手が右サイドの荒川選手にパス、その荒川選手がディフェンスラインの裏にボールを上げると左サイド、ペナルティエリアの中にいた途中出場の板垣大翔選手がヘッドで逆サイドへ大きく振る、ボールは右サイドの矢崎レイス選手の所へ、でもちょっと大きいか…と思ったところに後ろからノーマークで走ってきた大内選手がボレーシュート! このシュートがゴールネットを揺らし、尚志が後半14分に先制した。
すると学法石川はすかさずロングスローが武器の福島騎士選手を投入。学法石川のスローインではその福島選手のロングスローで何度もチャンスを作るが、そこは危機管理の出来ている尚志ディフェンスが体を張ってシュートコースを防いだり、今大会初出場のキーパー野田馨選手がパンチングで逃れたりと、両者の攻防が激しさを増す。
1対0のまま迎えたアディショナルタイム3分、恐らく最後のプレーかという学法石川コーナーキックのチャンスには、尚志の裏をかくグラウンダーのキックを見せるが、尚志がクリアをしてタイムアップ。尚志が1点を守り切り、4年連続15回目の選手権出場を決めた。
表彰式が終わり、バックスタンドに挨拶に行った選手たちを見送った尚志高校・仲村浩二監督は、しゃがみこんで
「もうハラハラする試合にしないでよ。」
と選手達を見ながら呟いた。
「前半早く点を取りたかった。それにしても、勝って当たり前と思われるのはきついな…。」
と選手権県大会の激戦ぶりと、王者としてのプレッシャーを吐露した。
「3年生にとっては毎年最後の選手権出場のチャンスなので、今年も行かせてやりたいという想いだった。」
と今年とこれまでの大会を振り返った。
「前半は良いサッカーが出来ていたと思います。必ず点は取れるから、焦れるなと伝え選手を後半に送り出しました。」
前半途中に4バックから3バックに変更した事については
「元々は3バックで行く予定で練習はしていました。4バックで様子を見て、3バックにして攻撃的にしようかと思って。ただ学法石川は粘り強い守りを見せるので、良いチームだなと思いました。」
と対戦相手を称えた。監督自身の選手権大会への想いについて聞かれると、
「私も(習志野)高校時代に選手権に2度出場して選手権で育てられたと思っています。選手権に出る為に、チームが一丸になる、学校が(応援などを通して)一つになる、“皆の為に”という事が出来る大会で、人間を育てる大会だと思っています。
この決勝も(先発の)11人、(ベンチの)25人に入れず悔し涙を流した子がいました。でもそういう選手は自分を殺しながらチームの為にやらなきゃいけない事を頑張っている。だからこそ選ばれた選手には『全国切符をもぎ取って来い』と言いました。
また全国大会に向けて選抜が始まります。人には競争が必要な時期があると思います。だから、こういう大会が永遠に続いて欲しいです。」
と、選手として人間として成長する為の“過程の大切さ”を話して下さった。全国大会に向けては
「一戦一戦大事に戦って、気が付いたら優勝していたという大会にしたいと思います。」
と語った。
敗れた学法石川・稲田正信監督は、選手の健闘を称えながらも
「思っていた以上に、“強度”が違うのかなぁ…。」
と振り返った。
「うちは県内のリーグで戦っている、でも尚志はプレミアリーグというもっとレベルの高いところで戦い続けています。今回セットプレーもずっと練習してきたんです。想定していた通りの、練習してきた場面もあったんです。でも試合ではミスが出てしまう。いざ県リーグとは違うレベルのチームと戦うと、選手(の心身)に想像以上の負荷がかかっていたのかなと思います。」
ただ試合展開としてはほぼプラン通りだったようだ。
「前半0対0で折り返したので、選手たちはやれるぞという感じで戻ってきました。私も選手には『優勝するには1対0や1対1のPK戦といった1点差ゲームだ』と話していました。0対1までは問題ないと考えていましたし、その通りの展開でした。勝たせてやりたかった…。」
あと1点が届かなかったが、稲田監督は選手の成長に目を細めた。
そういえば準決勝の帝京安積戦は0対0、延長でも決着がつかずPK戦の末に勝ち上がった。その試合では前半終了間際、帝京安積の4本か5本の矢継ぎ早の連続シュートをディフェンダー・ゴールキーパーが文字通り体を張って防ぎ、0対0で折り返した場面があった。決勝進出を決めた後にその事を尋ねると、稲田監督は
「そうなんですよ、あの場面で失点していたら試合は分からなかったんです。あの場面、理屈じゃないんです。人任せにしようと思ったら、守れません。自分がいかなきゃって思えないと、守り切れないんです。それは心技体でいう心の問題なんです。」
そう熱く語った時、既に稲田監督は選手権を通して選手の心技体が成長してきた事を実感し、また確信していた。
「この1か月、選手は本当に成長したと思います。」
なお昭和51(1976)年に全国大会が首都圏開催になってからの記録(今大会含め49回)に関して触れると、
・無失点優勝は、尚志としては8年ぶり4度目(あとは67回大会の郡山商業のみ、無失点優勝を果たしている。)
・先制したチームが優勝したのはこれで38回目(勝率 .776)。
18日(月)には組み合わせ抽選会が行われ、尚志の初戦の相手(もしくは相手代表校の府県)が決まる。
選手権を戦った全ての選手・関係者・保護者の皆さん、お疲れ様でした。そして有難う御座いました。
決勝
尚志1-0学法石川
(尚志は4年連続15回目の選手権出場)
試合は立ち上がり、いきなり尚志がチャンスを掴む。荒川竜之介選手が中央へ上げたボールを、西丸由都選手が胸トラップでディフェンスラインの後ろに落とし、長坂隼汰選手がシュートを狙うも、長坂選手のポジションがオフサイド。ただ長坂選手がシュート前1回触ったかどうか、それ以外は全部ワンタッチ(ノートラップ)プレーで正確につなぐ精度の高さを見せつける。
更には左からのクロスボールを学法石川の吉田遥登選手がクリアしたところで、大内完介選手がやはりノートラップでシュート。枠を捉えられなかったが、鋭いシュートを放っていく。
一方学法石川もここまで3試合無失点の堅守ぶりを発揮し、0対0で前半を折り返した。
そして後半、学法石川は中盤からの縦パスを、相手ディフェンダーを背負った鳥居樹生選手が受けると、反転して右サイドをドリブルで上がり、後ろから上がってきた板倉紘誠選手へパス、その板倉選手がドリブルで上がろうとするところを後ろから尚志が体を当てて倒すファウルで、学法石川が同点のチャンスを迎える。ペナルティエリアのやや外、ゴールまで右45度の角度という絶好の位置からのフリーキックだったが、フリーキックが予想以上に伸びてそのままゴールラインを割ってしまい、惜しいチャンスを逸する。
対して尚志は左サイドで長坂選手が、2人がかりでボールを奪いに来るところをキープし、中央へドリブル突破を図る。だが学法石川もしつこい守りで自由にさせないでいると、長坂選手が星慶次郎選手にボールを下げ、星選手が右サイドの荒川選手にパス、その荒川選手がディフェンスラインの裏にボールを上げると左サイド、ペナルティエリアの中にいた途中出場の板垣大翔選手がヘッドで逆サイドへ大きく振る、ボールは右サイドの矢崎レイス選手の所へ、でもちょっと大きいか…と思ったところに後ろからノーマークで走ってきた大内選手がボレーシュート! このシュートがゴールネットを揺らし、尚志が後半14分に先制した。
すると学法石川はすかさずロングスローが武器の福島騎士選手を投入。学法石川のスローインではその福島選手のロングスローで何度もチャンスを作るが、そこは危機管理の出来ている尚志ディフェンスが体を張ってシュートコースを防いだり、今大会初出場のキーパー野田馨選手がパンチングで逃れたりと、両者の攻防が激しさを増す。
1対0のまま迎えたアディショナルタイム3分、恐らく最後のプレーかという学法石川コーナーキックのチャンスには、尚志の裏をかくグラウンダーのキックを見せるが、尚志がクリアをしてタイムアップ。尚志が1点を守り切り、4年連続15回目の選手権出場を決めた。
表彰式が終わり、バックスタンドに挨拶に行った選手たちを見送った尚志高校・仲村浩二監督は、しゃがみこんで
「もうハラハラする試合にしないでよ。」
と選手達を見ながら呟いた。
「前半早く点を取りたかった。それにしても、勝って当たり前と思われるのはきついな…。」
と選手権県大会の激戦ぶりと、王者としてのプレッシャーを吐露した。
「3年生にとっては毎年最後の選手権出場のチャンスなので、今年も行かせてやりたいという想いだった。」
と今年とこれまでの大会を振り返った。
「前半は良いサッカーが出来ていたと思います。必ず点は取れるから、焦れるなと伝え選手を後半に送り出しました。」
前半途中に4バックから3バックに変更した事については
「元々は3バックで行く予定で練習はしていました。4バックで様子を見て、3バックにして攻撃的にしようかと思って。ただ学法石川は粘り強い守りを見せるので、良いチームだなと思いました。」
と対戦相手を称えた。監督自身の選手権大会への想いについて聞かれると、
「私も(習志野)高校時代に選手権に2度出場して選手権で育てられたと思っています。選手権に出る為に、チームが一丸になる、学校が(応援などを通して)一つになる、“皆の為に”という事が出来る大会で、人間を育てる大会だと思っています。
この決勝も(先発の)11人、(ベンチの)25人に入れず悔し涙を流した子がいました。でもそういう選手は自分を殺しながらチームの為にやらなきゃいけない事を頑張っている。だからこそ選ばれた選手には『全国切符をもぎ取って来い』と言いました。
また全国大会に向けて選抜が始まります。人には競争が必要な時期があると思います。だから、こういう大会が永遠に続いて欲しいです。」
と、選手として人間として成長する為の“過程の大切さ”を話して下さった。全国大会に向けては
「一戦一戦大事に戦って、気が付いたら優勝していたという大会にしたいと思います。」
と語った。
敗れた学法石川・稲田正信監督は、選手の健闘を称えながらも
「思っていた以上に、“強度”が違うのかなぁ…。」
と振り返った。
「うちは県内のリーグで戦っている、でも尚志はプレミアリーグというもっとレベルの高いところで戦い続けています。今回セットプレーもずっと練習してきたんです。想定していた通りの、練習してきた場面もあったんです。でも試合ではミスが出てしまう。いざ県リーグとは違うレベルのチームと戦うと、選手(の心身)に想像以上の負荷がかかっていたのかなと思います。」
ただ試合展開としてはほぼプラン通りだったようだ。
「前半0対0で折り返したので、選手たちはやれるぞという感じで戻ってきました。私も選手には『優勝するには1対0や1対1のPK戦といった1点差ゲームだ』と話していました。0対1までは問題ないと考えていましたし、その通りの展開でした。勝たせてやりたかった…。」
あと1点が届かなかったが、稲田監督は選手の成長に目を細めた。
そういえば準決勝の帝京安積戦は0対0、延長でも決着がつかずPK戦の末に勝ち上がった。その試合では前半終了間際、帝京安積の4本か5本の矢継ぎ早の連続シュートをディフェンダー・ゴールキーパーが文字通り体を張って防ぎ、0対0で折り返した場面があった。決勝進出を決めた後にその事を尋ねると、稲田監督は
「そうなんですよ、あの場面で失点していたら試合は分からなかったんです。あの場面、理屈じゃないんです。人任せにしようと思ったら、守れません。自分がいかなきゃって思えないと、守り切れないんです。それは心技体でいう心の問題なんです。」
そう熱く語った時、既に稲田監督は選手権を通して選手の心技体が成長してきた事を実感し、また確信していた。
「この1か月、選手は本当に成長したと思います。」
なお昭和51(1976)年に全国大会が首都圏開催になってからの記録(今大会含め49回)に関して触れると、
・無失点優勝は、尚志としては8年ぶり4度目(あとは67回大会の郡山商業のみ、無失点優勝を果たしている。)
・先制したチームが優勝したのはこれで38回目(勝率 .776)。
18日(月)には組み合わせ抽選会が行われ、尚志の初戦の相手(もしくは相手代表校の府県)が決まる。
選手権を戦った全ての選手・関係者・保護者の皆さん、お疲れ様でした。そして有難う御座いました。
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