2003.07.02
或る日の風景
黄昏時というにはほんの少し早い頃、境内にたった一人女学生がいた。作法に則り二礼して手を合わせていた。
そこに小走りで中年の男性がやってきた。男性はちょっと躊躇した感じで歩みをとめたが、女性を回りこむように脇から賽銭を静かに落とした。そして女性のやや斜め後ろに離れて立つと、二礼して殆ど音をたてずに二度柏手を打った。
時間にすると二、三秒だろうか、祈りのしじまが続いた。
すると今度は女性の方が本当に小さく二度柏手を打った。
ややあって男性は本殿に一礼し、小走りに境内をあとにした。
女性は更に暫く合掌を続けると、漸く俯いた白い顔を上げ、静かに一礼をしてゆっくりと境内を去っていった。
お互いの厳かな時間を妨げまいとする気遣いが伝わって、そんな瞬間に巡り会えた偶然に私は感謝した。
もう、黄昏時だ。
そこに小走りで中年の男性がやってきた。男性はちょっと躊躇した感じで歩みをとめたが、女性を回りこむように脇から賽銭を静かに落とした。そして女性のやや斜め後ろに離れて立つと、二礼して殆ど音をたてずに二度柏手を打った。
時間にすると二、三秒だろうか、祈りのしじまが続いた。
すると今度は女性の方が本当に小さく二度柏手を打った。
ややあって男性は本殿に一礼し、小走りに境内をあとにした。
女性は更に暫く合掌を続けると、漸く俯いた白い顔を上げ、静かに一礼をしてゆっくりと境内を去っていった。
お互いの厳かな時間を妨げまいとする気遣いが伝わって、そんな瞬間に巡り会えた偶然に私は感謝した。
もう、黄昏時だ。
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