アナウンサー

アナウンサー日記

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2007.10.28semi-final

 全国高校サッカー選手権福島県大会・準決勝の結果。

尚志2−1昌平
郡山1−0富岡

 この日の会場、郡山市は雨。ピッチは多量の雨を含むと水溜りが出来る場所だ。
 第一試合は、去年の準決勝と同じカード。去年は尚志が3−0で完封勝利。昌平は「打倒・尚志」を合言葉に、この選手権だけに照準を当てて練習をしてきた。言わばリベンジマッチだ。
 昌平の吉田監督は、試合前に「雨は昌平に有利に働くんじゃないですか?」と話した。そして選手には、「雨で尚志とは五分五分だ。あきらめずにボールを追え。この選手権で勝つ為に、俺達は練習をしてきた。20分間はシュートで終われ!」と檄を飛ばした。そして「○○、お前、緊張してるのか?俺が一番緊張しているか…」とイレブンを笑わせた。
 運動量で絶対の自信を持つ昌平、パスサッカーの尚志は雨でパスが思うように繋がらないと踏んだ吉田監督だったが、その思惑に近い形で前半は進む。尚志は重いピッチ、重いボールで、パスが思うように通らなかったり、FKが決まらなかったりと苦しむ。対する昌平はそのパスを奪って全員が動くサッカーで、チャンスを伺う。そして前半13分、昌平は尚志がクリアしきれなかったボールを高橋秀嘉選手が拾うと、シュートコースが開くとペナルティエリアの少し外からミドルシュート。真っ直ぐ伸びたボールが途中からやや右上方に伸びて、尚志のGK松浦和己選手も反応するが、その手を超えてゴール!!昌平が先制点を挙げる。
 しかし尚志は後半、選手を1人交代させて縦への突破を増やす。更にパスの質が後半から変わった。弱いパスではなく、目標とする場所に「バチン」と当てるような強いパス。これで尚志のパスワークが復活した。ただどうしてもフィニッシュだけが決まらない。それでも後半13分、ペナルティエリアの外からのFKのチャンスに、「王様」内山俊彦選手が、ゴール左隅に決める素晴らしいゴール!苦しんで尚志が同点に追いつく。
 その後はチャンスの数で圧倒的に上回る尚志、対して少ないチャンスでカウンターを狙う昌平、お互いに自分達の色を出して戦うが、1対1のまま延長戦に入った。
 延長後半からは尚志が超攻撃的に行くが、どうしてもゴールを割れない。このままPK戦かと思われたロスタイム、尚志の渡部耕平選手が昌平のGKの逆を突く鋭いヘディングシュート。見事尚志が粘る昌平を力でねじ伏せ、逆転勝ちで2連覇に王手をかけた。

 尚志の仲村監督は、「練習で先制される事も想定していたので、焦りは無かった。」と話したものの「雨は尚志に不利に働いた。」と振り返った。そして延長での逆転勝利については「点差が開かないシビアな展開だったので、決勝前に良い経験ができた。『選手権とは厳しい大会なのだ』と身をもって知ったのは大きい。」と飽く迄、連覇に向けて前向きに試合を捉え「決勝は楽しみたい。」と締め括った。そして記者が囲む取材が終わった後、「昌平はここまでやるのか…。」とぽつりと呟いた。これは本音であろう。

 試合終了後の昌平、殆どの選手が泣いていた。吉田監督さえ、男泣きしていた。実は延長後半、尚志の渡部選手が、決勝点の前にシュートを1本、クロスバーに当てていた。
「あの場面で昌平に運があるのでは、と思ったんですが…。」
と正直に聞いてみると、目を真っ赤に腫らした吉田監督は
「そうですよね…。PK戦はうちが得意としていたので、勝てると踏んでいたのですが…。」
と唇を噛んだ。
 「尚志にあって昌平に無かったものは何ですか?」と酷な事を尋ねると、
「勝負強さ…ですかね。(延長後半ロスタイムに決勝ゴールを挙げた尚志は)勝負強かったです。」と言ったあと、こう付け加えた。「あと、経験ですかね。」
 「きょうの昌平イレブンは、百点満点で何点ですか?」と聞くと、間髪を入れずに「百点ですよ!」と答えてくださった。「選手達は本当によくやりました。誉めてやりたい。少ない中、本当に頑張ってくれました。」とイレブンを褒めちぎった。昌平はサッカーで特待生を入れる事は無い。私学の学費が公立に比べれば高いのを理由に、思ったようには選手が集まらないのが実情だ。新人戦の頃は登録可能な25人が揃わない事もある。そんな中、「集まってくれた選手を鍛え上げる」のが吉田監督の方針。そして照準は、選手権。その為に、ほかの大会では色々な選手に機会を与えて、勝てる選手を見つけ出していく。秋までには毎年、運動量豊富で展開の大きなサッカーが出来るまでに選手を育て上げ、選手もそれを自信として勝ち上がる。選手権で2年連続ベスト4は、その証である。
 「また来年、選手権で戻ってきます。チームを作ってきます。」と力強く語った吉田監督。おととし初のベスト8、去年初のベスト4と着実に前進し続けている昌平サッカー、また来年が楽しみだ。
 そして、この雨で滑る、ボールはコントロールしにくいという悪い状況の中、100分間両チームとも、足のつる選手は勿論、運動量が目立って落ちる選手が1人もいなかった事に感嘆した。辛い試合を勝ち抜く素地をきちんと備えていた点でも、拍手を贈りたいと思う。


 準決勝第2試合の前、郡山の江本監督とたまたますれ違ったので、挨拶がてら「今日はどうですか?」と尋ねると先週同様、にやり。手応えがあるようだ。
 ただ前半はどちらに得点の匂いがしたかというと、富岡だったと思う。特に富岡の中盤やディフェンスラインの守備が機能し、郡山の攻撃を寸断してゲームを組み立てていた。特に矢吹明男選手の足を生かした再三再四のスルーパスは、郡山の守備に風穴を開けるかと見えた。しかし郡山のディフェンスラインは、強靭だった。富岡の攻撃に怖がって下がる事無く、何度もオフサイドをとって見せた。そして富岡には、フィニッシュが決まらない事で少し苛立ちがあったようにも見えた。公式記録でもシュートが富岡4本に対して、郡山が0。オフサイドも富岡が5つ取られている。
 しかし後半は、郡山がギアを2段くらい上げたように見えた。立ち上がり、攻撃にスピードが出て、富岡エンドでの攻撃時間が増える。そんな中、後半5分に郡山がPKを得る。ここはエース平山靖幸選手が落ち着いてキーパーの逆を突き、郡山がシュート1本で1点を得る。富岡は後半システムを変えるなどして何度も郡山ゴールを脅かすが、どうしてもフィニッシュが決まらない。そのまま80分間を逃げ切った郡山が、7年ぶりの決勝進出で7年ぶりの優勝まであと1勝に迫った。

 郡山の江本監督は、「想像以上にスリッピーで、選手もやりにくかったと思うが、勝因は精神面で強くなったから。」と振り返った。更に「PKは、あの時だけたまたまうちの選手がペナルティエリアに大勢いて、相手が焦ったのだろう。1−0で勝つのが理想と考えているので、結果的に良かった。また守備が良く機能していた。」と攻守両面での勝因を付け加えた。但し富岡の矢吹選手の突破だけは「前後半に1回ずつ冷やりとした。」と、胸の内を明かした。
 そして決勝で当たる尚志の印象については「内山選手、渡部選手をはじめ、タレントが揃っていて強い。」と始めたが、「強いが、強いから勝つ訳ではない。郡山高校らしいサッカーをして、尚志に挑戦したい。」と勝負師としての想いを覗かせた。

 富岡の佐藤監督は、試合後に悔しさをこらえていた。先週まで富岡のイレブンが選手権を勝つ度に「この選手権の厳しい戦いの中、毎試合強くなっている。」と目を細めていた。去年ベスト16、今年ベスト4と、創部2年目でこの躍進は目覚しい。ただ県サッカー協会が「サッカー王国ふくしま」宣言をして、県内の中学の優秀な選手を中心に富岡高校に進学を勧めている背景もあるだけに、佐藤監督のプレッシャーも並みではない筈だ。特にチャンスに決め切れなかった事を悔やみ、「ここがまだまだ弱いところ。選手はもっと良いプレーが出来る筈」と、選手に求めるレベルがもっと高いところにある事を示した。
 「この敗戦から収穫は?」と質問すると、佐藤監督は即座に
「負けたら、収穫なんて無いですよ。」
と答えた。だがそれは佐藤監督の真意ではない。攻めながら郡山のゴールを攻略できなかった悔しさを「収穫なんて無い」という言葉で表現したのだ。
 「創部2年目で、まだ1・2年生しかいません。3年生が(サッカー部に)いないんです。でもこの子達は、選手権という厳しい公式戦を通して、3年生という壁を経験できました。これは富岡にとっては貴重な経験です。そして(初のベスト4まで来た事で)去年より確実に成長した事です。」と話した。常々、佐藤監督は「選手権は違う」と口にしていらっしゃる。福島県の高校生の目の色が違う大会なのは、一度でも大会を見た事がある方は、そして前述した昌平のエピソードを見れば、お分かり頂けると思う。1年のサイクルで最も選手の力量が充実する大会で、ベスト4に進出した手応えと、ベスト4で敗れた課題とを掴んでいらしたようにお見受けした。


 決勝は、2連覇を狙う尚志と、7年ぶり4度目の選手権を狙う郡山の対戦。舞台は11月3日(土)、Jヴィレッジスタジアム。午後1時より生中継。是非、ご注目下さい。

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2007.10.26anniversary

 郡山市の安積開拓から130年、その開拓された大地の恵みをお菓子に生かした職人たちがいる。先日ニュースでも伝えたのだが、その職人たちは、単に130年を記念して作ったのではない。発表の前に互いに改善点を話し合った上で発表したのだ。

 という内容の番組のナレーションを担当。ディレクターが映像に合わせてナレーションを練習中にこう言った。
「徳光さん、この職人さんの内3人が、『こだわりの和菓子』に出てくださった方なんですよ。」
 確かに、私が映像で見て、ナレーションをつけた職人さんだ。だとしたら、味も間違いは無かろう。
 詳しくは、あさっての午前11時15分からの「発見!探検!こおりやま」をご覧ください。

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2007.10.23plastic

 ひょんな事からplasticという言葉を調べた。するとplasticには「プラスチックの」のほかに「可塑性のある」「形を作る、形成力のある」、更にそこから派生したのであろう、「柔軟な」「不自然な」ってな意味がある。ま、プラスチックが「可塑性のある」ものだからその名が付いたのだろうけど。
 因みにplastic moneyには「クレジットカード」という意味がある。
 それだけでした。

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2007.10.20best 4

 全国高校サッカー選手権福島県大会、準々決勝の結果。

尚志5−1相馬
昌平3−1双葉
富岡2−1福島工業 (夏準優勝の福島工業敗れる)
郡山2−0会津工業 (夏ベスト4の会津工業敗れる)

 尚志と相馬の対戦は、尚志が逆サイドまで視野に入れた長いパスからスルーパスまで多彩な攻撃を見せれば、相馬も横や縦に揺さぶるワンタッチプレーでディフェンスをかわしシュートまで持っていく。そして前半13分、尚志の杉江佑馬選手がパスでためを作る間に上がっていってシュート。これが先制弾となり、尚志が先制する。更に29分には阿部昌裕選手のゴールで2−0、37分にはワンツーで相馬ディフェンスを交わした長谷川浩太選手からのパスを田中真之選手がドリブル、クロスボールに反応した内山俊彦選手が決めて3−0とし、前半を折り返す。
 後半は内山選手のPK、江津佑馬選手のゴールで尚志が5−0とする。しかし相馬も残り2分で、高橋晃平選手が一度は尚志のGK松浦和己選手にシュートを弾かれるも粘ってシュートを放ち1点を返し、5−1と一矢を報いた。
 相馬イレブンの手の甲には「絆」の文字が書かれていた。永山監督の指示通り、最後まで「絆」を大切にあきらめずに戦った相馬イレブンに拍手を贈りたい。

 昌平と双葉の対戦は、前半13分に昌平が高橋秀嘉選手のシュートで先制すると、後半9分に双葉の加藤岳選手の鮮やかなFKで同点に追いつく展開。しかし大きな展開を武器とする昌平は、17分に逆サイドに出たクロスボールを、この日先発を任された大谷純選手が強烈なシュートを決め、勝ち越しに成功する。更に21分に昌平はFKがゴール前に直接飛び込むと双葉DFのオウンゴールを誘い、昌平がベスト4に駒を進めた。
 昌平の吉田監督、実はハーフタイムに「後半に1−1にされたら、4回戦みたいにPK戦に持ち込まれる展開になるからな」と2点目を取りに行くよう指示を出していただけに、本当に1−1にされた場面では「選手が焦ってしまいましたかね。」と苦笑い。しかし吉田監督の起用に応えた大谷選手の決勝ゴールなどで、2年連続でベスト4に進出した。対戦相手は尚志と、去年の準決勝と同じ顔合わせ。「去年の借りを返すには、去年と同じ準決勝、去年と同じ会場の西部サッカー場と、良い条件ですね。」とにやり。去年と違うのは、去年は警告の累積でレギュラー1人が欠けた中での戦いだったのだが、今年は警告の累積で出られない選手がいない事。「カードだけは気をつけろと言ってきましたから、それが無くて良かった。打倒尚志を目標にやってきたし、この選手権大会だけに照準を合わせてきました。」と準決勝でのリベンジ、そして初の決勝進出に意気込みを見せた。

 福島工業と富岡の試合は、序盤なかなかお互いに持ち味が出ない。そんな中、前半24分に富岡がハーフウェーライン付近からの長いFKを鈴木文健選手がヘッドで流し、ゴールラインを割ってしまいそうなボールを矢吹明男選手が粘って折り返す。それを大槻英希選手がヘディングで決め、富岡が先制して折り返す。
 更に後半28分、何とか同点にと前がかりになった福島工業の裏を突くように、富岡はクロスボールに鈴木選手が叩きつけるようなシュートで2点目。福島工業は痛い2失点目を喫する。しかし福島工業も残り3分でFKから、ゴール前にこぼれたボールを菊地宏明選手が押し込んで1点を返すが、同点には追いつけず。創部2年目の富岡が、夏準優勝の福島工業を破って、初のベスト4進出を決めた。
 決勝点を挙げた鈴木キャプテンは、試合後「どっちも勝ちたいという気持ちが出た試合だったが、その中で(ゴールを)決められて良かった。兄が(会場に)来ていると思うんですが、1点決められて良かった。(兄のリベンジの為に)、決勝で勝ちます。」と語った。因みに先週の日記に書いたが、鈴木キャプテンのお兄さんは湯本高校のエースストライカー。富岡が決勝に進めば、湯本を破った尚志と当たる可能性がある。

 会津工業と郡山の対戦前、郡山の江本監督のもとを訪れた。
「きょうは、どうですか?」
との問いに、江本監督は眉を2度ぴくっぴくっと動かし、意味有り気ににやり。
「きょうは中盤を厚くしました。メンバー表を見たら、うちの変更点に事前に気付いちゃうかな?」と語ったあと「きょうは、やりますよ。」と勝負師の目を見せた。
 試合は、郡山の速いプレッシャー、速いドリブル突破で会津工業の良さを完全に消す戦い。そして13分に平山靖之選手が会津工業のDFを交わしてシュート。先制ゴールを挙げる。会津工業は、思ったより郡山が速かったのか、やや焦りを見せて前半1−0で折り返す。
 後半はさすがに会津工業も再三チャンスを作るが、あと1本が出ない。堪えた郡山は、残り9分でコーナーキックから鈴木裕也選手のヘディングで2−0と突き放す。会津工業は最後まで攻め続けたがゴールネットを揺らせず、郡山が7年ぶりのベスト4進出、夏ベスト4の会津工業はまさかのベスト8敗退となった。
 江本監督は、新たな戦術、新たな選手の起用が当たった事に、「負けたら誰の責任でもない、全て自分の責任という試合だった。だから勝ちたかった。」とこの一戦に賭けた勝負師としての想いを吐露した。「それでも会津工業の選手は皆速いし、最後まで脅威だった。特に攻撃の3人は並みの速さじゃないでしょ?それに対して選手はよく頑張った。こんなに選手って(1週間で)変われるものか、と思った。」と選手の健闘を讃えた。そして起用した選手がきちんと結果を残した事について「これで控えの選手達はきっと『ああ、監督はちゃんと俺達の事を見てくれているんだ。』と思ってくれるでしょう。」と、更にチーム内競争が激化する事を示唆した。「それにしても、ベスト8の壁を越えたのは7年ぶりですよ。いっつも(準々決勝のある)この会場の、このピッチの、こっち側のベンチで負けていたんですから。3回ここで負けて、4回目でやっとベスト4です。」と安堵の表情。そこで「そんなに久しぶりのベスト4ですか。7年前って…?」と問いかけると、即座に江本監督「優勝して以来ですよ!」更に、「でもこれで夏ベスト4の内、湯本・福島工業・会津工業の3チームが消えましたね?」と振ると「でも、うちは新人戦のベスト4なんですよ。意外ね、意外ね?って感じかも知れないですけど。」とプライドをちらりと見せた。対戦相手の富岡については「私が16歳以下の国体チームで見たメンバーがずらりといるチーム。テクニックがありますから…。」と気を引き締めていた。
 対する会津工業は、この夏の遠征で昨年度の選手権に出場した某チームと引き分けたのを自信にここまで勝ち上がってきた。特に先週の4回戦では6得点と、堅守の会津工業が「攻撃の」会津工業という側面も見せ、更に今季郡山に負けなしだった事もあって、無得点で終わった事がショックだったに違いない。夏に続くベスト4は最低目標だっただけに、選手は試合終了後ベンチ裏で全員が涙を流し、鈴木監督も涙をこらえながら全員と握手をして回った。そして一人、最後まで離れがたそうにピッチの芝を足でなぞる選手がいたのが、心に痛かった。

 この結果、準決勝は以下の組み合わせ。

尚志−昌平
富岡−郡山

 今度の土曜日、西部サッカー場で決勝に進む2校が決まる。

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2007.10.16Othello

 演劇を観るようになったのは、大学の講義がきっかけだった。名物教授、O教授の「英米演劇」という講義は年に2本か3本、先生の紹介する演劇を観に行ってレポートか何かを書くのが条件だったように思う。日本で初めてシェイクスピアの劇を全て上演したシェイクスピアシアター、当時は幕間にお菓子を振る舞ってくれた喜劇専門のテアトル・エコー、劇団民芸、昴、地人会(今月で活動を停止してしまうらしい、残念)、俳優座等々、新劇のいろはを教わった講義だった。
 先日、久しぶりにシェイクスピアを見に行った。大学時代ベニサンピットなどでよく見た吉田鋼太郎さんが主演の『オセロー』(蜷川幸雄演出)だ。客席の通路から、舞台上は3〜4階位の高さまでを駆使したダイナミックなオセローだった。ま、一番のお目当ては蒼井優さんだったのだが、さすが『アニー』でデビューした女優さんだけあって、舞台での声の通りがまず素晴らしい。讒言にのせられたオセロー(吉田さん)から不貞の疑いをかけられるのだが、本当に純粋で嘘の無い女性デズデモーナを見事に演じていた。幸せなラブラブ時代、いわれの無い疑いをかけられるどん底を味わい、涙を流して歌うしかなく、それでも尚信じる夫に手をかけられても今わの際まで夫を信じ、愛し続けた真っ直ぐな女性を、本当に魅力的に演じていた。演技力やその年齢も含め、私が見た数少ない『オセロー』の中で最もしっくりするデズデモーナだった。女優・蒼井優を益々好きになった次第。でへ。尚、平手を受ける場面があるのだが、映画『フラガール』みたいに本当に叩かれる事は無かった(そりゃ、上演期間中毎日叩かれたら、デズデモーナじゃなくなっちゃいますから)。
 嘘で周りの人の心を操る悪人イアーゴを演じるのが、高橋洋さん!いやはや素晴らしい俳優さんだ。イアーゴは人の心の弱さに嘘を吹き込んで、自分の手を出来るだけ汚さずに悪事を働き、自分の良心を封じ込めるように言い聞かせながら悪を貫徹する奴なのだが、上辺を善人に、内面を悪人に演じ分ける姿が却って心地よく見えるくらいだった。これからも注目。
 そして吉田鋼太郎さん、オセローが嫉妬に狂う様はお見事。演技がまずいと、狂えば狂うほど可笑しく見えたりこちらがひいてしまったりするのだが、これぞ吉田オセローで、そりゃオセローもこんなに取り乱すくらいに悩み苦しむよな、と納得させてくれた。ま、それも蒼井優さん演じるデズデモーナが愛らしい女性だからかな、でへ(←そこに戻るか!?)ただこの日は少々喉がお疲れのようで…、同じ声を使う仕事の人間として大変さが想像できた。

 それにしてもシェイクスピアは、人の心の真実を洞察できる点でも、洞察したものを表現する詩人としても天才だ。人の心の弱さ、移ろい、煩悶、嫉妬を教わったのは、シェイクスピアからと言っても過言ではない。実際、私の周りにもイアーゴはいる(イアーゴよりずっとずっと小者ですが…)。本人はイアーゴになり切っているつもりだろうが、どっこいこちらは結末を知っている観客のような目で見ている。人生を生きる力と智恵を授けてくれる人、その名はシェイクスピア。なんてね。

 因みに日本が生んだ名ゲーム「オセロ」は、この『オセロー』に由来するとテレビで見た事がある。アフリカ生まれの傭兵将軍オセロー(黒人)とヨーロッパ人の妻デズデモーナ(白人)が結婚してから悲劇を迎えるまでの波乱万丈は、黒が白に、白が黒にと目まぐるしく展開するまさに盤上のゲーム内容そのもの…だと言う。

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アナウンサープロフィール

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