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semi-final
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全国高校サッカー選手権福島県大会・準決勝の結果。
尚志2−1昌平
郡山1−0富岡
この日の会場、郡山市は雨。ピッチは多量の雨を含むと水溜りが出来る場所だ。
第一試合は、去年の準決勝と同じカード。去年は尚志が3−0で完封勝利。昌平は「打倒・尚志」を合言葉に、この選手権だけに照準を当てて練習をしてきた。言わばリベンジマッチだ。
昌平の吉田監督は、試合前に「雨は昌平に有利に働くんじゃないですか?」と話した。そして選手には、「雨で尚志とは五分五分だ。あきらめずにボールを追え。この選手権で勝つ為に、俺達は練習をしてきた。20分間はシュートで終われ!」と檄を飛ばした。そして「○○、お前、緊張してるのか?俺が一番緊張しているか…」とイレブンを笑わせた。
運動量で絶対の自信を持つ昌平、パスサッカーの尚志は雨でパスが思うように繋がらないと踏んだ吉田監督だったが、その思惑に近い形で前半は進む。尚志は重いピッチ、重いボールで、パスが思うように通らなかったり、FKが決まらなかったりと苦しむ。対する昌平はそのパスを奪って全員が動くサッカーで、チャンスを伺う。そして前半13分、昌平は尚志がクリアしきれなかったボールを高橋秀嘉選手が拾うと、シュートコースが開くとペナルティエリアの少し外からミドルシュート。真っ直ぐ伸びたボールが途中からやや右上方に伸びて、尚志のGK松浦和己選手も反応するが、その手を超えてゴール!!昌平が先制点を挙げる。
しかし尚志は後半、選手を1人交代させて縦への突破を増やす。更にパスの質が後半から変わった。弱いパスではなく、目標とする場所に「バチン」と当てるような強いパス。これで尚志のパスワークが復活した。ただどうしてもフィニッシュだけが決まらない。それでも後半13分、ペナルティエリアの外からのFKのチャンスに、「王様」内山俊彦選手が、ゴール左隅に決める素晴らしいゴール!苦しんで尚志が同点に追いつく。
その後はチャンスの数で圧倒的に上回る尚志、対して少ないチャンスでカウンターを狙う昌平、お互いに自分達の色を出して戦うが、1対1のまま延長戦に入った。
延長後半からは尚志が超攻撃的に行くが、どうしてもゴールを割れない。このままPK戦かと思われたロスタイム、尚志の渡部耕平選手が昌平のGKの逆を突く鋭いヘディングシュート。見事尚志が粘る昌平を力でねじ伏せ、逆転勝ちで2連覇に王手をかけた。
尚志の仲村監督は、「練習で先制される事も想定していたので、焦りは無かった。」と話したものの「雨は尚志に不利に働いた。」と振り返った。そして延長での逆転勝利については「点差が開かないシビアな展開だったので、決勝前に良い経験ができた。『選手権とは厳しい大会なのだ』と身をもって知ったのは大きい。」と飽く迄、連覇に向けて前向きに試合を捉え「決勝は楽しみたい。」と締め括った。そして記者が囲む取材が終わった後、「昌平はここまでやるのか…。」とぽつりと呟いた。これは本音であろう。
試合終了後の昌平、殆どの選手が泣いていた。吉田監督さえ、男泣きしていた。実は延長後半、尚志の渡部選手が、決勝点の前にシュートを1本、クロスバーに当てていた。
「あの場面で昌平に運があるのでは、と思ったんですが…。」
と正直に聞いてみると、目を真っ赤に腫らした吉田監督は
「そうですよね…。PK戦はうちが得意としていたので、勝てると踏んでいたのですが…。」
と唇を噛んだ。
「尚志にあって昌平に無かったものは何ですか?」と酷な事を尋ねると、
「勝負強さ…ですかね。(延長後半ロスタイムに決勝ゴールを挙げた尚志は)勝負強かったです。」と言ったあと、こう付け加えた。「あと、経験ですかね。」
「きょうの昌平イレブンは、百点満点で何点ですか?」と聞くと、間髪を入れずに「百点ですよ!」と答えてくださった。「選手達は本当によくやりました。誉めてやりたい。少ない中、本当に頑張ってくれました。」とイレブンを褒めちぎった。昌平はサッカーで特待生を入れる事は無い。私学の学費が公立に比べれば高いのを理由に、思ったようには選手が集まらないのが実情だ。新人戦の頃は登録可能な25人が揃わない事もある。そんな中、「集まってくれた選手を鍛え上げる」のが吉田監督の方針。そして照準は、選手権。その為に、ほかの大会では色々な選手に機会を与えて、勝てる選手を見つけ出していく。秋までには毎年、運動量豊富で展開の大きなサッカーが出来るまでに選手を育て上げ、選手もそれを自信として勝ち上がる。選手権で2年連続ベスト4は、その証である。
「また来年、選手権で戻ってきます。チームを作ってきます。」と力強く語った吉田監督。おととし初のベスト8、去年初のベスト4と着実に前進し続けている昌平サッカー、また来年が楽しみだ。
そして、この雨で滑る、ボールはコントロールしにくいという悪い状況の中、100分間両チームとも、足のつる選手は勿論、運動量が目立って落ちる選手が1人もいなかった事に感嘆した。辛い試合を勝ち抜く素地をきちんと備えていた点でも、拍手を贈りたいと思う。
準決勝第2試合の前、郡山の江本監督とたまたますれ違ったので、挨拶がてら「今日はどうですか?」と尋ねると先週同様、にやり。手応えがあるようだ。
ただ前半はどちらに得点の匂いがしたかというと、富岡だったと思う。特に富岡の中盤やディフェンスラインの守備が機能し、郡山の攻撃を寸断してゲームを組み立てていた。特に矢吹明男選手の足を生かした再三再四のスルーパスは、郡山の守備に風穴を開けるかと見えた。しかし郡山のディフェンスラインは、強靭だった。富岡の攻撃に怖がって下がる事無く、何度もオフサイドをとって見せた。そして富岡には、フィニッシュが決まらない事で少し苛立ちがあったようにも見えた。公式記録でもシュートが富岡4本に対して、郡山が0。オフサイドも富岡が5つ取られている。
しかし後半は、郡山がギアを2段くらい上げたように見えた。立ち上がり、攻撃にスピードが出て、富岡エンドでの攻撃時間が増える。そんな中、後半5分に郡山がPKを得る。ここはエース平山靖幸選手が落ち着いてキーパーの逆を突き、郡山がシュート1本で1点を得る。富岡は後半システムを変えるなどして何度も郡山ゴールを脅かすが、どうしてもフィニッシュが決まらない。そのまま80分間を逃げ切った郡山が、7年ぶりの決勝進出で7年ぶりの優勝まであと1勝に迫った。
郡山の江本監督は、「想像以上にスリッピーで、選手もやりにくかったと思うが、勝因は精神面で強くなったから。」と振り返った。更に「PKは、あの時だけたまたまうちの選手がペナルティエリアに大勢いて、相手が焦ったのだろう。1−0で勝つのが理想と考えているので、結果的に良かった。また守備が良く機能していた。」と攻守両面での勝因を付け加えた。但し富岡の矢吹選手の突破だけは「前後半に1回ずつ冷やりとした。」と、胸の内を明かした。
そして決勝で当たる尚志の印象については「内山選手、渡部選手をはじめ、タレントが揃っていて強い。」と始めたが、「強いが、強いから勝つ訳ではない。郡山高校らしいサッカーをして、尚志に挑戦したい。」と勝負師としての想いを覗かせた。
富岡の佐藤監督は、試合後に悔しさをこらえていた。先週まで富岡のイレブンが選手権を勝つ度に「この選手権の厳しい戦いの中、毎試合強くなっている。」と目を細めていた。去年ベスト16、今年ベスト4と、創部2年目でこの躍進は目覚しい。ただ県サッカー協会が「サッカー王国ふくしま」宣言をして、県内の中学の優秀な選手を中心に富岡高校に進学を勧めている背景もあるだけに、佐藤監督のプレッシャーも並みではない筈だ。特にチャンスに決め切れなかった事を悔やみ、「ここがまだまだ弱いところ。選手はもっと良いプレーが出来る筈」と、選手に求めるレベルがもっと高いところにある事を示した。
「この敗戦から収穫は?」と質問すると、佐藤監督は即座に
「負けたら、収穫なんて無いですよ。」
と答えた。だがそれは佐藤監督の真意ではない。攻めながら郡山のゴールを攻略できなかった悔しさを「収穫なんて無い」という言葉で表現したのだ。
「創部2年目で、まだ1・2年生しかいません。3年生が(サッカー部に)いないんです。でもこの子達は、選手権という厳しい公式戦を通して、3年生という壁を経験できました。これは富岡にとっては貴重な経験です。そして(初のベスト4まで来た事で)去年より確実に成長した事です。」と話した。常々、佐藤監督は「選手権は違う」と口にしていらっしゃる。福島県の高校生の目の色が違う大会なのは、一度でも大会を見た事がある方は、そして前述した昌平のエピソードを見れば、お分かり頂けると思う。1年のサイクルで最も選手の力量が充実する大会で、ベスト4に進出した手応えと、ベスト4で敗れた課題とを掴んでいらしたようにお見受けした。
決勝は、2連覇を狙う尚志と、7年ぶり4度目の選手権を狙う郡山の対戦。舞台は11月3日(土)、Jヴィレッジスタジアム。午後1時より生中継。是非、ご注目下さい。




